③ウェリントン型メガネとセットの笑顔、そして美容医療が見えないセンス

写真:ロイター/アフロ

この人は昔から顔が全く変わらない。しっかりとシワもあり、ほとんどそういうお直し系をやっていないのは明白。いやそう見えないところがセンスなのかもしれません。

 

じつは、この人のトレードマークと言えるのが、ウェリントン型のメガネ。このメガネが、年齢不詳のパワーを持っていて、顔立ちそのものを若々しく見せる。ただしこれがファッションの一部になっていないと、ちょっと面倒くさい女に見えたり、構わない女に見えたりしてしまいがち。
しかしダイアン・キートンの場合はこれが見事にファッションの一部になっていて、小気味良いくらいにカッコいい。そして何より気難しくて、構わない、諦めた女に見えないための絶対の決め手が、そのメガネとセットになっている満面の笑顔なのです。

この人は、写真を見ても映像を見てもほとんど笑っていて、映画の中でもよくウェリントン型メガネをかけているけれど、それが一瞬たりとも難しく見えない、なんとも魅力的な素晴らしい人間性の証のように見えるのは、やはり笑顔とセットであることの勝利。しかも、笑顔そのものがとりわけ美しい人、それもじつは絶対の若さの秘密だったりして。
歳を重ねるほど、笑顔が減る傾向にあるのは否めない事実で、だからこそ70代女優で最もよく笑うこの人は、別格の若さを誇るのです。

かくして3つの理由を挙げましたが、ここでいうセンスとは、ファッションセンスばかりを指しているのではありません。いや言い換えれば、ファッションセンスはすなわち人間的なセンス。
良い悪いではなく、ファッションが不思議な人は、人間も変わっているもの。どうしたら若々しく見えるか、そういう分析力も含めてセンスがいいと、ファッションを含めた全ての正解が見えてくるのです。

そして何より、センスとは=バランス感覚。ほんのちょっと髪のトップをふんわりさせたら3歳若く見えるとか、このシャツに太いベルトをつけたらもっと年齢不詳に見えるとか、ダイアン・キートンもそういうバランスを取る運動神経が半端じゃないのです。
逆に言えば、誰だって、家でスッピン、部屋着で寝転んでれば、ちゃんと年相応に見えてしまう訳で、若く見えるかどうかは、ほんの一手間で決まるのです。
結局のところ、出かける前の最後の鏡チェック、そこで人は自ら作った印象年齢で、玄関を出ていくのですから。