母も学んで、勉強し、成長していく

 

稽古場を訪れた坪倉さんのお母様にも、日々どんなことを思っていたのか尋ねてみたそうです。

「大変なことが起きていたけれど、絶対になんとかなると思われていたと。私もその思いを持って演じてみたいと思います。本の中で起こったことを、自分に起こったことだと思って見ていると、少しだけでも挑戦してみようとする“ぼく”の姿がものすごく嬉しいんです。母も学んで、勉強し、成長していきます」

 

ダブルキャストで同じ“母”を演じる濱田さんは、長年劇団四季の顔として主役を演じ続け、退団後も数々のミュージカルで主要な役を演じています。宝塚歌劇団のトップスターであった柚希さんとは、劇団育ちであることも共通点。お互いの稽古を見合って、一緒に作っているそうです。

「本当にびっくりするくらい心地が良いダブルキャストです。みんなで一緒のものを見て、一緒のものを表現したいから、目指すものが一緒なんです。やりづらいところや、心情を一緒に考えています。何も抱え込まず、全てを教えてあげるという姿勢が素晴らしいなと思います。どうしてあんなにもすべてをオープンにしてくださるのでしょう。だからこそ、さらに吸収してエンドレスに成長されていくんだろうなと思いました。

以前、宝塚の新人公演で、トップスターである湖月わたるさんの役をさせていただいたときに、『この役のことを一緒に考えてくれる人がいるのは幸せだ』と言っていただいたことがありました。おこがましいと思いながらも、確かにどの人よりもその役のことを考えている人が、自分の他にもう一人いるんだなと、こうやって作品を作ることは幸せだと当時も思っていました。めぐさん(濱田めぐみさん)も劇団育ちでいらっしゃるので、そういう感覚なのかもしれないですね。抱えておくことなんてない。むしろ教えることによって、さらに学ぶみたいな。なんて心地の良い方なのだろうと思います」