退院後の初冒険のゴールは、表参道のヘアサロン


退院後はのんびりと過ごしながら、ボチボチ社会復帰……、と考えていたのですが、その目論見は見事に外れました。

12月10日の退院以後、運転再開のための眼科検診(脳出血により視野が欠けていないかなどの検査)や免許センターでのテスト、小学校の保護者会にPTAの行事、リハビリ病院への通院、少年野球チームの卒団式と、やることが目白押し。さすが、みんなが走り回る師走だけあります。

10月、11月と白紙だった手帳が、みるみる真っ黒に。文字が震えて心もとないのは、左手で記入しているため。

入院中に病院内理容室で、久しぶりのヘアカットを敢行した私。退院した以上、いつものヘアサロンに行きたくてたまりません。そこでさっそく予約を入れ、退院1週間後には表参道に行くことになりました。

初一人外出は、表参道のヘアサロン。こうして「いつも行っていた場所へ、普通に行ける」ことが、このうえなく幸せなのだ。

地下鉄に乗るのは、実に5カ月ぶり。夫が表参道まで、付き添ってくれることになりました。乗り換え通路は、われ先にと急ぐ(と私には思える)人々でいっぱい。ヨタヨタと端っこを歩きながら、「みんな、歩くの早いなあ」と驚くばかりの私。

それにしても、地下鉄の乗り換えって、こんなに階段多かったっけ? 装具で足首が固定されて曲がらないため、一段一段、両足を揃えながら降りないとならず、ものすごく時間がかかるのです。みなさん、お急ぎのところすみません……!

そんなこんなで、何をするにもものすごく時間がかかります。かなり余裕をもって出たはずなのに、サロンに着いたのは予約ギリギリの時間。でも、上手なシャンプーや惚れ惚れするハサミさばき、美容師さんとの世間話や共通の友人のバカ話などを堪能し、胸がいっぱいになりました。

新しい年が明けてしばらくたったころ、作った晩ごはん。荒いながらもキャベツの千切りができた!

遅いといえば、家事にもめっぽう時間がかかります。散らかった部屋は少しずつ片手で片付けたおかげで、ようやくものがあるべきところに収まり始めていました。洗濯は……、干したり畳んだりがめちゃくちゃ大変。手は両手が揃ってこそ、と痛感する毎日です。しばらくは、夫に頼ることにしました。

息子が、週末の野球にもっていくおにぎり。おにぎりを握るとは、右手と左手の共同作業であることを実感。この不格好な3つを作るだけで、30分近くかかってしまった。具は、煮豚、わかめ、梅干し。

そして、大好きな料理。

とはいえ毎日が必死すぎて、楽しむ余裕はなかなかもてません。退院当初は左手で包丁を使っていましたが、よく切れる包丁をゲットして以降、力があまりなくても食材を切れるようになり、右手で包丁がもてるようになっていきました。

どうやら料理は、左手と右手が最大限にパフォーマンスを発揮すればなんとかなることが発覚。でも、りんごなどの皮剥きや魚の三枚おろし、盛り付けなどはまだまだ苦手です……!