人生の最期にどう在りたいか? ゲームで見えた本音


最期の希望を明確に確認しておきたいですが、高齢の両親や持病がある友人に、「死にそうなったら、延命治療してほしい? どうしてほしい?」とはなかなか切り出せません。そこで見つけたのが、もしものための話し合いを楽しみながらできる、「もしバナゲーム」

 

<もしバナゲーム>
36枚のカードがあり、35枚には重病や死の間際に「大事なこと」として人が口にする言葉が書いてあります。(英語表記も併記されていて、そのほうがしっくりくるかも)。残り1枚のワイルドカードは自分独自の希望がある時に使います。
ひとりでも数人でも使い方は自由です。私はゲットして早速一人でやってみました。重要なこととそうでないことは、即決できました。でも家族や友人と共有しないと意味がないので、私の「まさか」体験を見守り、助けてくれた猫互助会のアラフィフのメンバーとその旦那さん(67歳)の4名で挑戦してみました。

 

<4人ルール>
① 5枚づつカードを配り、場にも5枚のカードを置き、残りのカードは積んでおきます。
1周目は自分の手持ちのカードから不要なものと場のカードを必ず交換します。
2周目からは交換したくない場合はパス。4人が全員パスすると場のカードを流し、積んだカードから新しく5枚並べます。必要なら交換、不要ならパスを続け、全員がパスすると場を流し、積んでいた全部カードがなくなると終了。
② 各自手元にある5枚のカードから、大切なカードを3枚選びます。それを披露しながら、どうしてそれを選んだのかをみんなに説明していきます。

ビール片手にゆるゆると始めてみました。最初は「呼吸が苦しくない」のカードが人気。「苦しいのは嫌だ」と口々に言っていましたが、他にもっと大切なことがあると、最後にはみんな手離したのです。「チャプレンって何?」(※)と検索したり、ワイワイ&ガヤガヤ。だんだん真剣に考えるようになっていきました。(※教会以外の施設や組織で活動する聖職者のこと)

私は、「主治医を信頼する」「自分の望む形で治療やケアをしてもらえる」「穏やかな気持ちにさせてくれる看護師がいる」といった医療系ばかりを無意識に集めていました。それを見ていた友人の旦那さんは、「医者だの看護師だの言っても、どうせ他人だぞ! 期待しないほうがいいよ」とネガティブな意見。「そうかもね」と曖昧に答えると。「どうせ死ぬんだぞ」と、急に饒舌になって、思いを熱く語り、一番真剣に取捨選択をやっていました(笑)。喧々諤々しつつ、3、4周目になると、それぞれの大切なことの優先順位が浮き彫りなったのです。

<それぞれが選んだカード>
T(女性・51歳)
・自分が何を望むか家族と確認することで口論を避ける
・尊厳が保たれる
・いい人生だったと思える

彼女は「家族が意見を押し付けてくる可能性が高い」と懸念。だから、自分の思い通りに死ぬためには、自分の気持ちを伝えておくのが必須だと、既にエンディングノートを準備していて、どこに置いているかも伝えているそうです。

私(女性・55歳)
・私の価値観を知る代弁者がいる
・痛みがない
・私の望む形で治療やケアをしてもらえる

あきからに終末期の医療やケアに期待しているとわかる結果になりました。結構、生きることにこだわっていたのですね。
「美加ちゃん、主治医が信頼できないと、めっちゃ怒りそうだよね。看護師にも絶対文句いうじゃん」と。周りには総つっこみされましたが……。

N(女性・56歳)
・ユーモアを持ち続ける
・不安がない
・私の想いを聞いてくれる人がいる

「結局死ぬのだから、笑いながら、楽しく、苦しくなくがいい。人生において一番大事なのはユーモア。あとは考え方を共有できる仲間が周りにいてくれれば、不安を減らせることにつながると思う」と、シンプルで明快な回答でした。彼女の生き様もその通りで、死に様もブレない願いでした。

I(男性・67歳)
・清潔さが保たれる
・人との温かい絆が保たれる
・大切な人とお別れをする

「だってキレイに死にたいよ。この札は最初からずっとキープしていた。呼吸が苦しいのはしょうがないし、誰かの役にたつまで生きられるかわからない。介護やケアを誰かにやってもらう上でも清潔でいたい」との回答に女性陣は意外過ぎて驚きました。でも自分の母親を介護し看取った経験をして、余計にそう感じるようになったそうです。

 

わずか1時間ほどでしたが、年齢や性別、それぞれの置かれた立場によって、「人生で何が大切か」「何を優先したいのか」、考え方の違いが想像以上に明確になりました。自分が大事なものを棚卸して、なぜそれが大事なのかひとつひとつ思考を整理できました。参加メンバーも全員、自分を見つめ直せたという感想でした。もしバナゲーム、なかなかのすぐれものです。

あなたの大事にしたいことはなんですか?

ご家族、友人、お子さんと、いろいろな組み合わせでやってみると興味深いです。顔を突き合わせて、お菓子を食べながら、お酒を飲みながらリラックスして、本音で話し合う貴重な時間になりました。考え方は常に変化しているので、定期的にやってみてはいかがでしょう。


 

【写真】話題の「もしばなゲーム」で盛り上がった実際の様子
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文・熊本美加
 

 
 
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