筆者も転職エージェントの門を叩きましたが、かなりの確率で「営業かエンジニアしか紹介できません」「ご希望を諦めるならお力になれます」と言われました。経験やスキルと希望にギャップがある場合、ダメもとの面接を仲介したり、可能性が低い業種のために添削、面接練習もカバーしていたらエージェント側の効率は悪くなりますから、仕方のない部分だと思います。「あなたは土俵にすら立っていないんです」「市場価値ゼロです」なんて辛辣なことを言われることもしばしば。結局、まったく相談に乗ってもらえないことも一度や二度ではありませんでした。

そんな中でも、まずは応募してみましょう、長期的に希望職種に就けるよう段階を踏みましょうとアドバイスしてくれるエージェントも。ですが、そうしたエージェントに出合える確率は極めて低いと感じます。希望を妥協できない、どうしても〇〇の業界・職種にチャレンジしたいという人は、自分で直接応募するほうが選択肢が広がることもあります。自分に合ったやり方を見極めることも、転職活動では大事なことかもしれません。

 

「市場価値」という指標の、居心地の悪さ

 

転職の広告などで、「市場価値」という言葉をよく目にします。もちろん、ビジネス的な文脈で使われる、特に深い意味はない用語なのだとは理解しています。しかし、いざ「自分に市場価値はない」と突きつけられると、やっぱり傷つくし、「稼げる力」「キャリア」といった限られた指標で人間の価値がはかられる感覚は、居心地が悪いものがあります。

就活市場では、どうしても履歴書・職務経歴書だけで全てがはかられてしまいます。それは効率や便宜上、仕方のない部分でもあります。でも、人間って、履歴書には書けない部分でいろんな面を持っていますよね。

ブランクはあっても、その間介護をしていた、勉強していた、様々なアルバイトをしていた、子育てをしていた。そういった経験って、ある意味ずっと安定した仕事を続けてきた人には絶対できない経験だと思います。そして、人生の正規ルートを外れ、回り道をした人だからこそ見える世界や、身に付けられない人間性もあると思うのです。第二新卒でキャリアがない中、丸腰で中途市場を戦うという経験は、安定したキャリアを積んできた人には絶対できないことです。