彼ら自身がどんなことをやりたいか。ソロ活動はBTSという概念を拡げるはず


小島:ここまで個々のメンバーにフォーカスしてお話を聞いてきましたが、いつかまたBTSがグループとしてカムバックするとしたら、どのような形になるとお考えでしょうか?

キム:それを予測するのは、ちょっと難しいですね。これまでBTSは、彼らが子どもから大人へ成長する過程で経験した苦悩や悟り、他者を知って自分を愛するという過程を歌ってきました。語りたかったことを、歌い尽くしてきたはずです。逆に言うと、今後はなんでも可能性があると思います。

重要なのは、彼ら自身がどのようなことをしたいのか。BTSにとって重要なのは歌詞ですよね。全員の伝えたいことが一致してこそ音楽が生まれるので、また集まったときに、7人がどんなことをやりたいか。それがどんなものなのか、私の予想を語るのは難しいですね。

 

小島:公式には解散とは言っていないですし、今後のグループ活動に関しては曖昧になっていますよね。兵役のタイミングなどを考慮すると、当面は7人全員でのカムバックはなさそうでしょうか?

キム:全員一緒に兵役に就くという方法もあるのですが、ひとりひとり計画が異なるので、そんな風にはしないのではないかと思っています。ひとりずつ行くことになったら、誰かが入隊して戻るとまだ誰かが行くということになり、オーバーラップする時間もあるかもしれませんが、スケジュールを調整しなければならないので、これまでのように全員でアメリカに行ったり日本に行ったりというようなワールドツアーを行う活動は、恐らく当面は難しいのではないかと。

ご存知の通り、BTSは解散するわけではありません。メンバーが脱退したわけでも、方向性の違いで活動が維持できなくなったわけでも、事務所と喧嘩別れしたわけでもありません。そういう事実からも、BTSは今後も存在し続けるということがわかります。ただ、現実的に考えると、これからグループ活動をする機会は減ってしまうので、しばらくは、これまで先延ばしにしていたソロ活動に力を入れることになったのでしょう。私は、これはすごくいいことだと思っています。それぞれが新たなフィールドで活躍すれば、結果的にBTSという大きな概念がさらに広がるのですから。

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『BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるか』
キム・ヨンデ 著 桑畑優香 翻訳
2020年5月27日発売
300頁
発売・発行:柏書房

米韓で活躍する韓国人音楽評論家が、2018年までにBTSが発表した全楽曲を徹底レビュー。さらに全世界を巻き込んだ「BTS現象」を、韓国音楽界の重鎮や作曲家や文学評論家、ジャーナリスト、グラミー賞投票者など各界の専門家のインタビューを交えながら掘り下げる。


取材/小島慶子
翻訳/桑畑優香
対談・文/浅原聡
 

 


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