――クローンが題材になっている近未来のストーリーですが、戸次さんはSFが大好きだとか。

 

戸次:体の半分はSFでできているというくらい好きです。腕を切ったら、ライトセーバーが出てきますよ(笑)。


――戸次さんは息子側を演じますが、実生活では父親でもあります。台本を読んで、この父親に対して感じたことは?

戸次:作中の父親はまるで褒められた人ではなく、絶対にありえない子育てをしています。僕があの父親の息子だったら、相当ショックを受けると思います。

――では、実生活における子育てのモットーは?

戸次:子供に聞かれたことには、意味を理解できようができまいが、なるべく正確に、真実を答えるようにしています。たとえば「なんで空は青いの?」と聞かれたら、「光というものには波長があって、波長の短い青い光が空気の分子にぶつかって広がっているからだよ。いろんな色の波長を見たかったら、プリズムを使ってごらん」といった具合です(笑)。

息子が喜んでくれると思い出演した『仮面ライダーリバイス』で「中に人が入っているの?」と聞かれた時は本当に困りましたね。教育方針として正直に「スーツアクターが入っている」と答えたんです。そうしたら「テンションが下がる」と息子に言われてしまって(笑)。慌てて取り繕いましたが、家で僕が『仮面ライダー』の台本を読んでいるので、「お父ちゃんがいつもやっているお仕事の嘘の世界」だとわかってしまうわけです。虚構と現実の狭間では楽しめなくさせてしまい、悪いことをしたなあと(笑)。ちなみに、サンタと節分の鬼は、私がまだ頑張っているので、完全に信じています!

 

――『A・NUMBER』は、脚本を拝読すると、台詞の量が膨大ですね。

戸次:すごいですよね。でも、こうした公の場で「台詞覚えがいいです」と言えるくらいいいので(笑)、量については何の心配もないんです。台詞覚えは、年を取るごとに早くなっています。昔は、自分の台詞に赤い線を引き、台本を見開きごとに〝絵〟として覚えていて、「前半のこのあたりで自分の台詞がくる」という感じで言っていたんです。

そんな芝居の流れを考慮しない覚え方だったので、30代後半で仕事が減ってしまって。これはまずいと、そのシーンの中での役割や流れを考えるために、人の台詞もすべて覚えるようにしたら、芝居も変わりましたし、台詞が早く入るようになりました。毎晩、息子と神経衰弱をやっているんですが、負け知らずですよ。5歳相手でも手加減はしません。今から、勝負の厳しさを教えないと(笑)。

――48歳にして記憶力がよくなっているとは! 体力面はいかがですか?

戸次:肉体的な老化はすごく感じます。10年前に北海道でサッカーのロケをしたんですが、当時、舞台公演中だったので怪我をしないようにスタッフがPKにしてくれたんです。にもかかわらず、内ももの肉離れを起こしましたから。10年前から自分の身体にはガッカリです(笑)。

それと、腰痛持ちなんです。劇場に入ってから入念なストレッチをやるのがルーティンなんですが、それでもぎっくり腰になってしまう。前回の舞台『奇人たちの晩餐会』は、腰を押えて登場して、物語の最後までぎっくり腰という役だったんですが、千秋楽に本当にぎっくり腰になってしまって。 大変でしたが、リアルなお芝居ができました(笑)。

――48歳という年齢を、さまざまな場面で実感なさっているということですね(笑)。

戸次:それはもう! 35歳を過ぎてからの時間って加速度的に速くなりませんか。しかも、加速の仕方が一次関数ではなく、二次関数的なんです。Xの2乗だから、速いのなんの。 またいつの日か小学生の頃のように1日が長く感じる日がきて、「今年は去年よりゆっくり進んでいるな」と思えるようになるのか。そう考えると、これから年を取る楽しみになってきます。