夫の不倫相手の勤務先に電話を入れた妻


「どうしても腹の虫が収まらなくて……その女性にも慰謝料を請求しようと内容証明を送ろうと思ったところ、その時点で判明した彼女の住所が、なんと元夫と同じ住所だったんです」

パンドラの箱を開けるべきが否かは、誰にも判断できません。けれどこうした話を聞くと、真実を知ることは必ずしも本人にとって楽な選択ではなさそうです。

「彼女に不倫の自覚があるかないかは分かりませんでしたが、とにかく頭にきてしまって。探偵に依頼した時に判明した彼女の勤務先に『私の夫と御社の○○さんが不倫関係にあるので、やめるように言ってください』と電話も入れました。

私、本当に馬鹿ですよね……」

目を赤くしながら、そう告白した早苗さん。きっと誰よりご自身が、こうした行動をとっても傷ついた心は癒されないと分かっていたのでしょう。

しかしながら、早苗さんの行動は妻として権利があるもの。その範囲であれば、納得がいくまで追求するのは本人の自由です。

「その後は半年ほど調停を繰り返し、100万円は返済され、慰謝料も希望の半額くらいですが請求することができました。その間の彼の言い分も面白かったです。『早苗に無理やり結婚させられた』とか『ビザのために利用された』とか。区役所の前で笑顔で婚姻届を提出する写真も残ってるのに。でもすべて弁護士に任せたので、元夫との接触はないまま離婚しました」

もともと高収入の早苗さんは、特にお金が欲しかった訳でもなく、気持ちの区切りとして決着をつけることが目的でした。

ちなみに女性への慰謝料請求は、その後本人の住所がきちんと特定できず諦めたそうです。2人の関係がどうなったかも知らないそう。

「離婚が成立したときはスッキリする……と思いましたが、短期間で色々なことが起きすぎて、心が回復するまでには正直時間がかかりそうです。こんなに嫌な思いをしても、やっぱり昔を思い出して一緒にいたかったなぁと悲しくなってしまったり。

一つだけ、もしコロナがなかったら、こんな風に関係が拗れることはなかったのかも、と思いますが……遅かれ早かれですよね、きっと」

コロナがなければ、ビザを取る必要もなく順調に交際を続けていたかもしれない。コロナにかからなければ、うつしたうつされたで揉めることもなかったかもしれない……。コロナ禍で試される人間関係の話はよく聞きます。

また「馬鹿な行動をした」と何度も仰っていた早苗さんですが、怒りや憎しみの裏にあるのはやはり愛情なのだと思います。

愛が冷めて無関心になることができたら、どれだけ楽か。けれど憎しみに変わってしまった場合、人は自分でも予想がつかない状態に陥ることがあるのでしょう。根っこに愛がある分、なかなか離れられずに苦しい思いもしてしまいます。

敢えて憎しみ合い、戦うことを好む人はまずいません。けれど、分かっていても綺麗事では済まないのが男女関係のもつれです。

ただ、まだ心の整理が完全につかない中でも、こうして胸の内を偽りなく話して下さった早苗さんは、素直で人間らしい方だと思いました。

「少なくとも結婚と離婚についての経験や知恵は得られました。少しずつ立ち直りながら、次はまともな恋愛や結婚がしたいと思ってます」

この経験を糧に、どうか前向きに日々を過ごせるよう、応援しています。
 


取材・構成・文/山本理沙
 

 

 

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