「速く」考えていると、陰謀論に陥りやすくなる!?


さて、上記の2つの思考の罠以上に、私たちが今もっとも陥りやすく、さらには陥るとリスクが大きいものがあります。それは“陰謀論”。

コロナウイルス、ワクチン、環境問題、食情報、また最近ニュースを賑わせている政治的な出来事もそうですが、昨今は何が真実で何が誤っているのか、個人レベルで見極めが必要な問題が増えています。できる限り冷静に情報を受け止め、判断できるようになるためにも、遅考術を有効に活用したいもの……。

植原:健康や食など、自分にとってリスクになりやすい問題は、白か黒かで考えやすくなってしまいます。これさえやっていれば安全、少しでも害があれば悪、などとなりがちですが、ひと口にリスクといってもグラデーションがあるものです。最近ですとコロナウイルスワクチンが分かりやすい例で、ワクチンだって決して100%病気から守ってくれるというものではありません。ワクチンを打っても感染することはありますが、多くの人にとっては有効な作用を得られる。そんなグラデーションの中でどこに位置するか、を見極めることが大切なんです。

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だけど極端化しやすい人は、「ワクチンを打っても感染する、だから無意味だ」となりやすい。そしてこの極端化は、思考の罠として誰もが陥る可能性があるものです。だから陥らないようにするには、極端な結論を導くパターンを知っておくことが大切です。

 

たとえばワクチン問題では、偏った因果関係の主張パターンが見られました。ワクチン接種後に亡くなった人の数を見せられ、「こんなにも亡くなっているんだぞ」と言われると、ついワクチンが原因で亡くなったと考えてしまいます。そこから「ワクチン=危険」と反ワクチン思想が生まれるのですが、これは、Aに続いてBが起こったときに、A→B(Aが原因でBが起こった)というパターンにとらわれているからなんです。でも実際には、ワクチンを打とうが打つまいが亡くなった人もいるはず。C→B、つまりAとは全く別の原因で亡くなった人もいたことでしょう。他の説明もできるのに、人はどうしても最初の説明に捉われやすい、という思考の罠があることを知っておきましょう。