寂聴さんは「もちろん書いていいわよ」と、井上荒野さんに語った


映画が公開されるのは2022年11月11日。1年前の11月9日に訃報が報じられた瀬戸内寂聴さん。井上荒野さんが本作を執筆するにあたっては、「もちろん書いていいわよ、なんでも喋るから!」と語り、刊行時には「作者の未来は、いっそうの輝きにみちている。百も千もおめでとう。」とのコメントを寄せました。

(C)2022「あちらにいる鬼」製作委員会

瀬戸内寂聴さんは、映画化にあたっても、寺島しのぶさんがみはる役を演じることを喜び、会うことを楽しみにしていたとのこと。しかし、コロナ禍もあり、寺島さんとの対面はかなわず、映画の完成を見届けないまま、この世を去っていきました。それでも、一周忌での公開となったのは、何らかの縁がここにもあったからかもしれません。

昭和30〜40年代を舞台とした、3人の男女の物語。3人の人生を賭した鬼ごっこは、ぜひ劇場で向き合ってほしい。心を揺さぶられる作品です。 

 


【写真】寺島しのぶ&広末涼子。ひとりの男をめぐる二人の関係は昭和の色濃く描かれていく
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<映画紹介>
『あちらにいる鬼』

 

人気作家の長内みはる(寺島しのぶ)は、講演旅行をきっかけに戦後派を代表する作家・白木篤郎(豊川悦司)と男女の関係になる。一方、白木の妻である笙子(広末涼子)は、夫の手あたり次第とも言える女性との関係を黙認、夫婦として平穏な生活を保っていた。だが、みはるにとって白木は肉体の関係だけに終わらず、〈書くこと〉による繋がりを深めることで、かけがえのない存在となっていく。二人のあいだを行き来する白木だが、度を越した女性との交わりは止まることがない。
白木を通じて響き合う二人は、どこにたどりつくのか――。

監督:廣木隆一 脚本:荒井晴彦 
原作:井上荒野「あちらにいる鬼」(朝日文庫)
キャスト:寺島しのぶ 豊川悦司/広末涼子


2022年製作/139分/R15+/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2022「あちらにいる鬼」製作委員会


撮影/田上浩一
ヘア&メイク/SETSUKO SUZUKI(寺島さん)、
倉田明美(THYMON Inc./広末さん)
スタイリスト/中井綾子(crêpe/寺島さん)、
道端亜未(広末さん)
取材・文/吉川明子
構成/坂口彩(編集部)