米ツイッターが全従業員の約半数を解雇したり、米メタ(旧フェイスブック)も全体の1割を削減するなど、米国のネット企業において大規模な人員削減が進められています。破竹の勢いで成長を続けてきたIT業界に、何が起こっているのでしょうか。

ツイッターは全世界に約7500人の従業員を抱えていますが、著名実業家のイーロン・マスク氏が同社を買収するや、いきなり半数を解雇してしまいました。リストラは全世界の法人や支社が対象となっており、日本法人に勤務する日本人社員も同様の扱いを受けているようです。 

米Twitter社を買収したイーロン・マスク氏(写真は2020年当時)写真:AP/アフロ

フェイスブックで知られるメタも1万1000人の人員削減を行ったほか、すでに新規採用を凍結していた米アマゾンは1万人の人員削減を計画中と報道されています。

 

これまでGAFA(米グーグル、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コム)を中心とした米国のネット企業はめざましい成長を続けてきました。株価も極めて高い水準で推移していましたが、ここにきて各社が一斉にリストラを実施しているのは、米国の景気後退懸念が高まっているからです。

米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、インフレを抑制するため金利の引き上げを急ピッチで進めています。金利を引き上げるということは、銀行からお金を借りにくくして景気を悪くするということとイコールですから、来年以降、米国の景気が後退する可能性がかなり高くなってきました。米国の金融当局は、止まらないインフレを何とか抑え込むため、景気を犠牲にしても金利を引き上げる方針です。簡単に言ってしまえば、インフレを取るのか、不景気を取るのかの二者択一となっており、苦渋の決断として不景気を取る選択をしたことになります。

米国経済は世界の機関車ですから、米国の景気が失速すれば、日本や欧州、中国にも影響が及ぶのはほぼ確実です。とりわけネット企業は景気の影響を大きく受けやすいですから、各社は経営に対する影響を最小限にとどめるため、今の段階から大規模な人員整理に踏み切っているのです。

もっともネット企業の業績が悪化するのは、米国の金利引き上げだけが原因ではありません。

 
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