いつも通りの夏の日曜日に、突然の脳卒中で倒れたのは、48歳2児の母でありフリーライターの萩原はるなさん。救急車で急性期病院に運ばれ、予兆も準備もまったくないまま入院生活が始まりました。
なぜ自分に、こんなことが起こったの? 後遺症は? 突然の事態に自分なりに向き合いながら、治療やリハビリに励んだ入院生活が終了。日々の生活に忙殺されるうちに、倒れてから1年が経過しました。脳卒中後の後遺症について、今思うこととは……?
自分でも不思議な、「麻痺」という言葉への抵抗感
脳卒中の恐ろしいところは、なんといっても後遺症が残るところでしょう。
後遺症には、右半身または左半身の手脚、顔などが麻痺する「片麻痺」、歩行障害や失語症、視覚障害や嚥下障害(スムーズに飲食できなくなるという障害)、高次脳機能障害など、さまざまなものがあります。
なかでも代表的なのは、やはり「麻痺」。
この連載では、私はほぼほぼこの言葉を使っていません。なぜなら、脳出血で倒れた瞬間から、「麻痺」という言葉は使うのも使われるのも、すごくイヤだったからです。
この言葉を嫌う脳卒中患者は多いのか(リハビリ病院で同室だった脳卒中フレンズも、軒並み「イヤ」と言っていた)、リハビリ病院で担当してくれたドクターや理学療法士、作業療法士も、極力「麻痺」という言葉を避けてくれていたような気がします。
なぜ、私はそんなにもこの「麻痺」という言葉に拒否反応を覚えてしまうのでしょう? 自分なりに考えてみたところ、幼いころに近所に住んでいたおじいさんが(今思うと)なんらかの病気で片麻痺になり、とても不自由そうに歩いていた記憶があるからだと思い当たりました。
その方の麻痺はとても重度で、倒れる前とはまったく違ったようすに、子ども心に強い衝撃を受けた記憶があるのです。今回、自分に「麻痺が残る」といわれたとき、「えっ、あのおじいさんと同じ状態になるの?」と思ってしまいました。何十年も、思い出すことすらなかったのに……!
それからというもの、麻痺という言葉に強い抵抗感を感じるようになってしまいました。
そもそも、麻痺とはどんな状態をさすのでしょう。
「広辞苑」によると、①しびれること。感覚のなくなること。また、本来の活発な動きや働きが鈍くなること。②〔医〕神経または筋の機能が停止する状態。運動麻痺と知覚麻痺とがある、とあります。
私は倒れる前、麻痺した感覚を、「歯の治療のときなどに注射などで打たれた麻酔が消えず、ものがうまく食べられない状態みたいな感じ?」と思っていました。
実際に「麻痺」を経験してみたところ、倒れた当初は「無」でした。触られる感覚などはありましたが、とにかくまったく動かない! 力がまるで入らず、だらーんとしたままなので、「腕って、こんなに重かったのか」と驚きました。
腕の重さが自分で支えられず「亜脱臼」になってしまうケースも多いとか。これを防ぐため、入院中は腕のサポーターが欠かせませんでした。
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