リハビリに大切なのは、身体のポテンシャルよりも「気合い」!?


初期は「無」だったとはいえ、徐々に夜な夜な手足が勝手に「ピーン」とつっぱって伸びる不随意運動が起こりはじめました。これのせいで安眠が何度妨害されたことか……! しかもこれ、すっごく不愉快。たとえて言えば、痛みはないものの、脚がつった感覚に似ています。いきなり襲ってくるところも同じです。

自分の意思に反して身体が動くのは、とにかく不本意。妊娠中もお腹がボコボコ動きましたが、あんな幸せとは無縁です(悲)。

脳卒中などの後遺症には、脚が勝手にピクピク動く「クローヌス」という症状もあります。これも突然起こるので、とてもやっかい。自分の意思ではなかなか止められず、苦労している人は多いようです。

さらに、肘や手足の指がぎゅーっと曲がる「痙縮(けいしゅく)」という症状も起こります。どうやら私たちの身体は、「ひらく」よりも「曲がる」力の方が強いよう。最初こそ「肘や指が動いた!」とうれしかったのですが、いかんせん、意思に反して曲がられるとイラッとします……! しかも、曲がるけど伸ばせない悲しさよ(涙)。

右手のリハビリの友、お手玉。投げて受ける本来の使い方ではなく、机の上に置き、ひとつひとつ床に落としていくという地味〜な作業に使用する。たったそれだけの動作に、疲労困憊!

「無」から少しずつ動くようにはなっていきますが、私の場合、脚のほうが断然回復が早かったです。療法士さんやドクターによると、脚の筋肉や神経は大きく、ある意味大雑把。それにくらべて手はかなり繊細なため、なかなか動かすのが難しいそう。

ちょっとでも指が動くようになったり、手首が返せるようになったりするだけで「すごいじゃないですか!」と喜んでくれた療法士さんたちの笑顔は、本当に力になるもの。リハビリ病院で出会ったのは、天使のような人たちばかりでした。

リハビリ病院の入院時代に、よく「萩原さんはもともと器用だから」「運動神経がいいから」回復が早い、と言ってもらっていましたが、私はとくに器用でも運動神経がいいわけでもありません。

それに「スゴイ回復力! いつも、すごく頑張っているからですね」とほめられましたが、格別、頑張ったつもりもなく……。

ただ、「このままの状態では困るし、帰れない!」と強く思ってはいました。なかには、すっかり意気消沈してリハビリをやろうとしないおばあさまもいたのですが、私ももっと高齢で、退院後の社会生活がなかったら、そうなってしまうかもなあ、と思います。

ただ、今なんとか歩けるようになっているのは、倒れてからずっと「動かすんだ」と頑張っていたのが大きいのかもしれません。

療法士さんたちがリハビリの合間にしてくれる、「手の回復は年単位」「退院後に遊びに来ると、みんな歩くスピードが上がっている」なんていう素敵な話も、おおいに励みになりました。

リハビリで重要なのは、器用さや運動神経よりも、「少しでもよくなりたい!」という気持ちなのかもなあ、と思っています。