世知辛い世の中で、あたたかい目線を知る


リハビリ病院では、麻痺の程度を測る「ブルンストロームテスト」を行いました。

入院時の結果は脚が「3」(意識的に足の曲げ伸ばしができる)、腕と手指が「2」(腕の上げ下ろしは難しいものの、筋緊張がわずかにみられる)でしたが、退院時は脚が「5」(立ったまま脚を後ろに引き上げることができる、または足関節が曲げられる)、腕と手指が「4」(握った状態で親指を離すことができる、または少しでも手を開くことができる。手を背中に回せるなど)までに回復。

退院から1年近く経過した今、いずれも最も軽いステージである「6」までなんとか達しているのではないか、と思っています。ちなみに手指は1から10まで両手で順番に屈曲伸展ができること(なんとかクリア)、手脚は麻痺していない側の1.5倍以内のスピードで動かせること(多分できる)、が「ステージ6」の条件です。

ただし小走りができないため、信号や電車のホームで急げないのがもどかしい! 階段もかなり危なっかしいので、手すりは必須です。杖も装具もなく、一見普通に見えるのがツラいところ。階段で「なんでこの人、こんなに遅いの?」と睨まれたことは一度や二度ではありません。

世の中は世知辛いなあ……、と思う反面、街には杖をついている人がいっぱいいることに気づけました。

会計に手間取っているおばさまを見ると「リウマチか関節痛で、手が動きにくいのかも」、エスカレーターで右側の手すりをもっている人に出くわすと「もしかしたら、片麻痺のお仲間?」などと、人に対して優しい気持ちになれるのも大きな変化です。

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不器用な左手と動きにくい右手で、子どもたちが大好きなだし巻き卵に挑戦。形は均一ではないけれど、初めてなんとか形になった! ちなみに卵2個分でだし汁大さじ2、しょうゆ小さじ1,砂糖小さじ1がうちの味。

いろんな窓口で「こちらに記入をお願いします」と書類を渡されるたびに、「字を書くのは大変なの、簡単に言わないで〜!」と思う日々ですが、地味ながら確実に動くようになっていることも実感。

その反面、50歳のカウントダウンとともに目はどんどん見えづらくなっていく……。はっ、この衰えゆく年代に、「身体が回復していく」というポジティブな経験ができる私って、じつは幸せなのでは!?

もちろん、病気にならないことが一番なのですが、そうでも思わないとやってられない(!?)のでした。


>>次回は、脳卒中の再発を防ぐ生活についてです。


写真・文/萩原はるな
構成/宮島麻衣
 

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