親から伝えておきたい「世の中は思い通りにならない」

 

――息子さんから「ゲーム内のアイテムを買ってほしい」というリクエストがあったエピソード、いわゆるゲーム内課金についても本の中で触れられていますが、これもゲームの中身を知らないとちんぷんかんぷんですよね……。

小籔 僕らが子どもの頃は「ゲーム画面の中のモノにお金を払う」っていうことをしたことがないから、それを欲しがる気持ちがまずわからない。嫁はんは「ゲームで課金なんてもってのほか!」っていうタイプですし。でも息子は粘り強く交渉してくるわけです。じゃあ、現実でこれをクリアしたええよ、っていう条件をつけることにしたんです。子どもに我慢させることが正しいかはわかりませんが、理不尽や我慢は子どものうちに教えておきたいことの1つでもあって。

――子どもに理不尽や我慢をどう教えるかは、大人としても難しいことの1つだなと感じます。

小籔 極端な例ですけど、目の前に1万円の欲しいものがあって、財布の中に5000円しか入っていなかったら、我慢できる人はじゃあ諦めて帰ろう、になる。それができへんと、1万円のものを盗むか、誰かからお金を巻き上げて1万円にすることを考えてしまう。仏教の教えには「一切皆苦(いっさいかいく)」という言葉があるんですが、これは世の中は思い通りにならないことばかりである、という意味なんですね。子どもにとっての初めての「思い通りにならないこと」って、親やと思うんですよ。僕としてはまず親からの理不尽さの中でうまく生きていく免疫をつけて、社会に出て行ってほしいと思っていて。課金をすんなり受け付けないのはそういう理由もあります。

 

ゲームが「親子の絆を深める」こともある


――「フォートナイトへたくそおじさん」こと小籔さん主催の、フォートナイトの親子大会も過去2回開催※されていますよね。動画を拝見しているとどの親子も仲良さそうにプレイされているのが印象的です。きっとそれぞれのご家庭でルールを上手に設けながらやっているんだろうなと感じます。
※フォートナイトの親子大会:「第3回 親子大会 featuring Fortnite オンライン予選」は【2023年1月6日~15日】に開催予定

小籔 親子大会では、ハートウォーミングな出来事がいくつも起こるんですよ。親御さんからは「親子の絆が深まりました」とか、「今まで会話もなかったけど、息子から練習しようって言ってきてくれました」って喜んでいただくことが多くて。そういうのを聞くたびに、ゲームは使い方によっていい効果があるんだと切実に感じています。

僕の子育てが正しいかどうかは、子どもが総理大臣になったわけでも、東大に入ったわけでもないので正直わかりません。でも、ゲームに理解を示してくれる大人や親御さんが増えたらいいなっていうのは、息子とフォートナイトをやって、ゲーム好きの立場になってから常々思うようになりましたね。

「フォートナイト」とは?
自分の分身であるデジタルのキャラクターを操作し、バーチャル空間で戦って最後の1人になることを目標とするゲーム。ソロモードでは最大100人が参加し、最後の1人を目指す。デュオモードは味方と2人組で他の2人組と戦うシステム(最大100人・50チーム)。トリオは3人組・最大33チーム、スクワッドは4人組で最大25チーム。知らない人とも即席でチームを組むことができるので、自分1人しかいないときでもデュオ・トリオ・スクワッドでのプレイが可能。マイク付きイヤホンかマイク付きヘッドセットを接続すれば、チーム内で会話ができる(ボイスチャットをオフにすれば、会話の拒否もできる)。<本書説明より>

『ゲーム反対派の僕が2年で4000時間もゲームをするようになった理由』
著者:小籔千豊 辰巳出版 1540円(税込)

子どもたちに「ゲーム禁止!」を掲げていた著者。のはずが、なぜオンラインゲーム「フォートナイト」にどハマりしたのか? そして息子とYouTubeで一緒にフォートナイトをプレイするまでに至った経緯とは? 「フォートナイトへたくそおじさん」としてYouTube動画も配信する小籔千豊さんが、ゲームを通して子どもたちと、そして育児とは何かに向き合った自身初となる著書。普段ゲームをやらない大人世代にこそ読んでほしい、ゲームへの新しい視点を得られる1冊です。挿入イラストはレイザーラモンHGさんが担当!



取材・文/金澤英恵