こういう仕事をしていると、たまにオススメの映画を紹介してくださいとか、オススメの小説を挙げてくださいという依頼が来る。こんなことを言って仕事が減るのも困るのだけど、実はあれがめちゃくちゃ苦手です。

 


答えは簡単。自分のセンスを問われている気がするからだ。

昔から、センスのいい人に憧れがある。この場合におけるセンスがいいとは、他の人があまり知らないような、だけど確かに質の良いものをよく知っている人を指す。高校時代、授業をサボって単館系のミニシアターに入り浸っている女友達はとてもカッコよく見えたし、アラフォー男子の大学時代はくるりかSUPER BUTTER DOGを聴いてるとオシャレな風潮が確実にあった。

一方で僕はと言うと、めちゃくちゃメジャーなコンテンツが好きな人間だった。好きなバンドはMr.ChildrenとBUMP OF CHICKEN。もうね、藤川球児くらいど真ん中のストレート。意外性のかけらもない。

当然ながら、ミスチルやバンプが悪いわけではまったくない。ただ、何て言うんだろう。「よく聴くのはミスチルとかバンプかな」と答えたときの、圧倒的なミーハー感。「この人、あんまり音楽詳しくないんだろうな」という目で見られている気がしていたたまれなくなる。

ちなみに、これがミスチル→スピッツ、バンプ→アジカンになると、似たような感じなのに途端に「ちょっとわかっている人」っぽく見えるので、本当にこの手の回答はややこしい。

先日も、ある女性誌の依頼で働く女性に向けた選書をすることになった。もうね、悩みに悩みまくった。選書をする以上、勧められなくてもみんな知ってますみたいな本を紹介しても仕方ないわけで。働く女性はみんな益田ミリを読めばいいと思っているけど、僕が言わなくてももう益田ミリはみんな読んでいるのである。

選書数は、2冊。1冊は、とあるアラ子の『ブスなんて言わないで』にしようと早々に決めた。ルッキズムとシスターフッドは、現代の女性たちには避けて通れないテーマだ。今っぽさも含めてちょうどいい塩梅だろう。

悩んだのは、もう1冊だ。2冊とも漫画というのもなんとなく気が引ける。別に漫画が下とか小説が上とか、そういうことは一切ない。一切ないけど、本当、小さな見栄みたいなもので、ちゃんと活字も入れておいた方が頭良さそうに見えるよな……? というくだらない計算が働くのだ。