モラハラ夫を“接待”で撃退した妻


「彼のような人と面と向かって争っても無駄なのはわかっていたので、まずは数人の弁護士に相談に行き、冷静に戦略を練ることにしました。30分〜1時間ほどの初回無料相談をしている弁護士事務所はたくさんあるので、とにかく何軒も周り、いろんな弁護士さんの意見を聞きました」

プロに聞くのはやはり近道。美月さんは、そこでまずは養育費や親権など、離婚の知識を得ました。そして、いかにスムーズに離婚を成立させるか慎重に行動したと言います。

「それまでは、毎日のようにケンカや言い争いをしていました。子供も小さいので、家の中はけっこう悲惨で。でも離婚すると決めてからは、『お互いにとって良い方法を考えよう』という切り口で、距離をとった方がお互いメリットがあると少しずつ説得したんです。

元夫は私への引け目から暴君化してましたから、とにかく刺激しないように彼を立てて優しく接しました。まるで接待です。もちろん嫌でしたが、課題はモラハラ夫との離婚。凄い凄いと褒めたり、離れても彼を応援する、息子にも好きな時に会わせるし、また状況がよくなれば戻ればいい。あなたは今は本当に大変な時期だから、家族に労力を割くよりも仕事に専念した方がいい……など、とにかく下手に伝えました」

このような方法でうまくいくのかと驚きましたが、もともと見栄っ張りで、実際よりも自分を大きく見せたがるご主人には、美月さんの作戦がかなり効いたそう。 

 

「とにかく彼を持ち上げることに徹すると、わかりやすく上機嫌になっていました。それに、もともと借金で贅沢をするくらいですから、お金のリテラシーが低い人です。いよいよ離婚の手続きに入ったとき、きっと値切られるだろうと養育費を多めに設定した書類を渡したのですが、詳細を確認せずにあっさりサインしてくれたんです」

 

こうして、特に揉めることもなく離婚が成立してしまった美月さん。しかし離婚後も元ご主人を逆上させないように気を遣い、“接待”は続いたと言います。

「もう離婚して別々に暮らしているのに、突然私の家にやってきて、息子のことはお構いなしに私に手を出そうとしてくることもありました。その度に、私はまたホステスのように彼にお酒を飲ませて泥酔させ不能にさせて……変に拒否して事を荒立てても何の得もありませんから。でも、この人と離婚できて良かったと痛感する日々でした」

淡々と語る美月さんですが、憎い夫に敢えて“友好的な接待”をするなど、結果うまくいったとはいえ、なかなか難しい対応だと思います。不本意ではあっても、こうした男性には“女”を使うのが有効なのでしょう。

聞く側としてはどうしても少し苛立ちが残りますが、息子さんのために、ご自身の会社のために、自分を抑えて離婚という目的を果たした美月さんは非常に強い女性だと感じます。

「元夫の対応は離婚後もそれなりに大変でしたが、とにかく籍を抜くことができて一命を取り留めました。しかもその後、意外にも元夫のクリニックの経営がうまく行き始めたんです。

養育費も払われ、貸したお金も返してくれるようになったので、ようやく環境が落ち着いたと思ったのですが……私も懲りない女で、また厄介な人を好きになってしまいました。それが今の夫です」