男女不平等はなくてもまた違う不平等がある


ではフランスではこういった“飲みニケーション”による不均衡は起きないのかと聞くと、そもそもフランスには職場の仲間と仕事の後にご飯に行くという慣習がない、と言います。

ひろゆき:日本は仕事とプライベートがごっちゃになりがちですが、フランスでは職場の飲み会は年に1,2回あるかどうか、というレベル。そもそもフランスは残業代も出ないので退社時刻が来たら皆さっさと帰りますし、家族との時間を大事にしているので、ダラダラ残業しながら合間にちょっとメシでも、ということはない。だからこの点で、男性に優位になるということはないんです。

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ただし“飲みの場で関係を作る”ということができない分、コネがある人が強くなりやすい傾向はある。もともと家柄が良かったり、有力者の友人がいたり、という人が引き立てられやすいんですよね。日本は勉強を頑張れば、学閥というコネを作ることも可能ですが、フランスの場合は大学というのは受験で入るものではなく、基本的に希望制。人気の大学は家柄のいい人が有利になるので、そこでもやはり家柄のいい者同士コネクションが生まれやすい。マクロン大統領などが卒業したグランゼコールという高等教育機関はまた別制度なんですが、つまり言いたいのは、日本のように努力やコミュニケーション力などをもってのし上がることが難しいということ。男女の不平等は少なくても、また違う不平等があるんです。

 

――どの国も、自国の良い部分を積極的に紹介して悪い部分は伏せがちになるものということでしょうか。私たちは「欧米の職場は誰もが働きやすい」と一様に思いがちですが、その国にはその国の一長一短があるようです。

では一体どうすれば日本において、「女性が働きやすい環境」は実現するのか。そもそも、「女性が働きやすい環境」とはどういった環境なのか。そこをきちんと考える必要があるのではないか、とひろゆきさんは言います。

ひろゆき:だって完全な実力主義が良いかと言ったら、そうとも言い切れないと思うんですよ。フランスは大卒じゃないとデスクワークにつくことができません。日本のように高卒でも事務の仕事につけることはまずないし、秘書検定のようなある種の救済措置もありません。学歴がなければ肉体労働をせざるを得ないのが現実です。

そのためか、フランスには女性のエンジニアが多いんですよ。フランスに限らず、女性エンジニアというのはや政情不安定だったり貧富の差が大きい国で割合の高い傾向がある。イスラム圏のほうがリケジョが多いとも言われていますしね。こういった国は、本当の意味で実力やスキルがないと女性が働けないから。日本はたしかに、女性らしさや気配りなど実力じゃないところで評価を得なくてはいけない大変さがありますが、一方で、実力がなくても働けるとも言える。さらには“働かない”という選択肢もある。本当に完全な男女平等が幸せか、そこは一概には言えない気がしています。

女性が働きやすい環境になることはもちろん誰もが望んでいることだと思います。が、そうして頑張って働いた先に、私たちは何を得たいと思っているのか。働く環境を変えたいのならば、そこまで考えて取り組んだほうが、本当の意味で私たちの幸せにつながるのかもしれません。そこで次回は、原点に戻って「何のために働くのか」ということを、ひろゆきさんと考えてみたいと思います。

<作品紹介>
『99%はバイアス』
ひろゆき著
¥1650/ダイヤモンド社

現在、SNSの総フォロワー数は300万越えのひろゆき氏。大ブレイクの裏側には「バイアス(思い込み)」を操る技術があったことを、初めて明かしたのがこちらの最新刊。「仕事が上手くいかないときの乗り越え方」、「会社で老害にならないために」、「仕事の休み方」など、自身の実体験をもとに、人や組織を動かす具体的な戦略やスキルを綴っています。どれも客観的でロジカルな思考から編み出されたものなので、誰もが学びやすく、生かしやすいものばかりです。


撮影/榊智朗
取材・文/山本奈緒子
構成/坂口彩