芸能界で85点は「何も持ってない」になる

 

ーー学生時代は成績優秀、生徒会長をやっていたりといわゆる優等生で、サッカーでも将来を有望視されていて。それでもコンプレックスが多く自己肯定感が低かったというのは意外でしたし、同時に、共感する部分でもありました。

 

たとえテストで85点取れたとしても、それを「100点取れなかった」とネガティブに受け取ってしまう性格だったんです。しかもお笑いは、学歴なんて関係ない世界。自分の持ってるものの中で何が生かせるんだろうと考えた時に、自分の中に武器をなかなか見つけられなかった。

芸能界って0〜20点の人と、90〜120点の極端な人が評価されるところがあるんですよね。20〜85点は「普通」に分類されて、学歴でいえば「何も持ってない」になっちゃう。高学歴芸人でもおバカ芸人でもない自分はいったい何者なんだろうっていう葛藤があったし、この世界でやっていけるのかなって気持ちもずっと持っていました。

ただ、芸能界を見渡してみたら、どちらかに突出した人だけじゃないし、一般の社会ではなおさら、20〜85点に分類されてしまう人がレンジとしては一番多いと思うんです。だから、その人たちの気持ちに寄り添うことはできるのかなとは思うようになってきて。僕も同じだよ、って。


ーー確かに。私も自己肯定感が低い方ですが、正直、りんたろー。さんの本でこんなに「わかる……!」となるとは思いませんでした。ずっと感じていたことをこんなに代弁してくれるなんて、と。自己肯定感の低さに自覚のある人なら、付箋を貼る手が止まらないと思います。

本当ですか。わー、そう言ってもらえると嬉しいな。ただ、TVとかで見る僕の印象って「チャラ男」とか「陽キャ」「リア充」みたいな感じだと思うんですね。でも自己肯定感の低さに悩んでいる人たちにとって陽キャって、“自分とは住む世界が違う人”って線を引いて壁を作ってしまう感覚があると思うんです。本当は一番届けたい、でもそんな届きにくい人たちにどうやってこの本を手に取ってもらうかは、今後の課題だなと思っています(笑)。

 


全てがファスト化される時代に「本」を選んだ理由


ーー確かに、パブリックイメージとはまた別の、りんたろー。さんの素の部分を垣間見せてくれる一冊でもありますね。

TVって尺がめっちゃ決まっていて、その中で全部を表現できるかといったらそうじゃない。自分のポジションの中で求められていることを考えながら発言しなきゃいけないので、その中で素を出すのはなかなか難しいんですよね。そういう意味で言うと、この本では僕の一番奥底の部分を、余すことなく表現できたんじゃないかなと。

ーー一冊を全て自分で書くということに、不安やプレッシャーはなかったんでしょうか。

ブログなどで書いた経験はあって、それでなんとなく、自分の気持ちをちゃんと伝えるツールとしては文章がベストだなという感覚が自分の中にあったんです。TVなどでは自分の思っていることをうまく言えないなって気持ちもどこかにあったんですけど、文章なら余すことなく、素直な部分で伝えられるなって。

今、いろいろなものがどんどん短くなって、ドラマや音楽もとにかくスピードを求められていて。そういう時代に、自分のペースで読み解いていって欲しいと思った時に、残されているツールって文章なのかなと思ったんです。シーンを飛ばすことなくイントロも削ることなく、行間の余白とかもきちんと残して表現できるのって本なんじゃないかな、と。なので、手段は自然と決まった感じですね。