椿屋珈琲のチーズケーキで娘さんのご機嫌取り。「僕以外みんなちゃんとしているから」


――そんなに家事を手伝ってくださる旦那様なら、奥様とケンカになんてならなそうな……。そんなイメージですが。

一之輔:ケンカしますよ。

 

――意外です。お弟子さんやほかの方から伺う印象だととても優しそうな奥様なのに、一之輔さんが高座で話す奥様像はとても強そうでギャップがあります。

 

一之輔:かみさんのことは多少、怖めに演出して話してますから。かみさんもそれを承知の上です。「どうせまた言うんでしょ、高座で」って。結構気が強いんですよ、優しそうに見えて(笑)。子どもたちは僕よりもかみさんのほうが怖いって言ってますから。

僕は怒ったとしても、上っ面だけ。でもかみさんは結構ギリギリまで溜めてから、バッというタイプ。だから怖いんじゃないかな。まぁ、何というか……。僕らの仕事は夜、家にいないじゃないですか。だから家庭内であんまり偉そうなことを言えないんです。だから、いつも子どものご機嫌を取ってますよ、嫌われないように。

――一之輔さんがお子さんに対してご機嫌を取る姿は、まったく頭に浮かびません。

一之輔:娘と一緒に出かけたりしますよ。発表会を観に行くとか、なるべくそういう時間を持つようにはしています。この間、「椿屋珈琲」のチーズケーキを食べさせたんです。そしたら、「こんな美味しいものは初めて食べました!」と娘が(笑)。いやいや、ほかにもあるでしょう? って。で、値段を見せたら「お金はあるの?」って言うんです。「大丈夫だよ。連れてきたってことは、お金あるってことだから」「えええ。こんな高くて美味しいものを!」って。

どんだけ、うちは貧乏なんだよ(笑)。そりゃ、ちょっと高いけどね、椿屋珈琲は。「ドトールよりは高いけど、これ払うくらいのお金はお父さん持ってますよ」って言ったら、「ええええ」って。

――娘さんとの会話も一之輔さんが話すと、楽しいマクラのように聞こえます。一之輔さんが心に決めている“子育ての信条”のようなものはありますか?

一之輔:信条!? でもね、僕が落語家なので「あーせい、こーせい」と言っても始まらないじゃないですか。「ちゃんとした仕事をしろ」とか、そんなこと言っても「お前はどうなんだ」ってなっちゃう。だから、うちは子ども3人のほうが僕なんかよりはるかにちゃんとしています。僕は中学生のときなんて親と口なんてきかなかったですから。ずっと部屋にこもっていて、メシの時間だけ食いに来て、明け方まで起きてるし。しかも電気をつけっぱなしで寝たりとか……。そんなんでしたから。

ちゃんとしているな、この人たちは、って思いますよ。家の手伝いもきちんとしますしね。だから、ちゃんとしているのはやっぱりかみさんじゃないですか。僕は子どもみたいなものなので。


――川上家(※)には、一之輔さんを含めて子どもが4人いるということですか?
※一之輔さんの本名。

一之輔:あああ、そうですね。確実にそうだと思います。しかも僕は決して長男じゃないです。多分、次男とか三男。さらに下かもしれないくらいです。