10年もの間、自己愛性人格障害と思われるモラハラ夫との関係性に苦しみ、子連れで離婚に成功した方のケースを検証。お店を開きたいという夢を抱いてハードワークをこなしていた涼子さんは、20代のときに夫の圭佑さんと結婚。しかし出産したとたん、壮絶なモラハラが始まります。カウンセラーに相談すると、「ご主人は自己愛性人格障害の特徴がある。家庭は精神的な密室になりやすいから環境を変えてはどうか」と指摘されます。

中編では、夫の精神的なDVから脱却しようともがく妻の試行錯誤と、対処法を検証していきます。

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「お前の育児が下手だから赤ん坊がガリガリなんだ」歪んだ夫の、他人に見せない狡猾な攻撃>>

 
取材者プロフィール
涼子さん(仮名)36歳、輸入雑貨店で勤務。小学生の娘を連れて昨年離婚。    
 


夫のモラハラで地に落ちた自己肯定感


「オープンした古着店は、アルバイトのスタッフを2人雇い、小さいながらに順調でした。夢にまで見た自分のお店ですから、いくらでも仕事は頑張れました。海外のバイヤーとの連絡は時差もありましたが、苦になりません。だけど夫はそれが面白くないのです。仕事が充実すればするほど、彼の攻撃は苛烈になりました。へとへとで帰宅して、夕食を作って、子どもを寝かしつけてから、深夜まで正座をさせられて説教をされるのも日常茶飯事。『母親のくせに家を蔑ろにしてどういうつもりだ!』って」

涼子さんが従順なため、ますます横暴な夫がつけあがっているように感じ、もどかしくなります。そのような状況になっても反論したり、逃げたりすることを考えませんでしたか? と当時の心境を確認すると、涼子さんが悲しそうに首を振りました。

「何もできない、出来損ないだ。俺に捨てられたら子連れで学歴もまともな職歴もないお前は野垂れ死にだ」と言われつづけ、自己肯定感がいつの間にか地に落ちてしまったというのです。パートナーの残酷な言葉は、心を破壊するのだと改めて感じました。

涼子さんは洗脳状態だったとはいえ、そのことを周囲の人に相談することができたら……あるいは、それほどの攻撃を、周囲の人は気が付かないものなのでしょうか。思い切って尋ねてみると、返ってきたのは意外な答えでした。