【性差別撲滅プログラム その①】ジェンダー用語に気をつける

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子どもが社会的グループに偏見意識を持つようになるには、いくつか条件があると発達心理学者のレベッカ・ビッグラー氏は言います。1つ目は必須条件で、その社会的グループが識別しやすいことです。誰がどのグループに属するか、子どもにわかりやすくしなければいけません(性別においてはたいてい、男女の見分けがつきやすい)。次に、以下の3つのうち最低でも1つの条件がそろわなければなりません。条件が多いほど、偏見意識が生じやすくなります。

 

①グループの構成が片寄っていること
少数派のほうが目立ち、偏見の対象になりやすい傾向がある。性差別にはあまり当てはまらないが、特定の環境下(チェスのキャンプで20人中4人しか女子がいないなど)では当てはまる場合がある。

②グループが他のグループと分離していること(理由の説明がない場合が多い)
主に人種差別に当てはまる。特定の環境下では性差別にも当てはまる(学校の休み時間に男女別々に遊ぶなど)。

③グループの特徴が、心理的に明白であること
人々がグループの特徴やグループメンバーを言葉で表したり、グループごとに異なる仕事を与えるなど。これは性差別によく当てはまる。ビッグラー氏はこの観点から、言語化は性差別を生む要因だと考えている。

ここからわかるのは、私たち親はジェンダー用語の使いすぎを控えるべきだということです。「男子」「女子」「男性」「女性」ではなく、できる限り「子どもたち」「生徒たち」「人々」と言う努力をしましょう。「女子たちがサッカーをしている」ではなく、「子どもたちがサッカーをしている」と言いましょう。

実践するのは難しいものです。私はジェンダー用語に気をつけ始めて以来、使う必要のない場面で「女子」「男子」という言葉をしょっちゅう使っていることに気づきました。子どもとジェンダーの話をしてはいけないわけではありません。むしろ、性差別についての話し合いは重要です。ただし、ジェンダーに関係ない話なのに、古い慣習に従って不必要に性別を強調するのは避けましょう。子どもが性別を重視し、性別にさまざまな意味があると考えるようになるという逆効果を生むからです。

子どもの担任の教師に、ジェンダー用語や性別による区別を用いないようリクエストしてもよいかもしれません。スウェーデンでは、これを実践している幼稚園が数校あります。最近の調査によると、これらの幼稚園ではジェンダーに関する固定観念的な発言が徐々に減少しているそうです。

※本書には「性差別撲滅プログラム その②~④」も掲載されています。
 

著者プロフィール
メリンダ・ウェナー・モイヤー(Melinda Wenner Moyer)さん:
『サイエンティフィック・アメリカン』誌の寄稿編集者として表彰を受けており、『ニューヨーク・タイムズ』紙にも多数の記事を寄稿している科学ジャーナリスト。『スレート』誌コラムニスト。一男一女の母親でもある。 

訳者プロフィール
塩田香菜(しおた かな)さん:
上智大学英文科卒。英国レディング大学大学院児童文学修士号取得。書店勤務、企業内翻訳などを経てフリー翻訳者。一男一女の母として子育てに奮闘中。

『科学的に正しい子育ての新常識』
著者:メリンダ・ウェナー・モイヤー/訳者:塩田香菜
ディスカヴァー・トゥエンティワン 1760円(税込)

「自己中」「飽きっぽい」「嘘」「いじめ」「きょうだいゲンカ」「スマホ・インターネット」「性への関心」など。さまざまな子育て問題への対処法を、一男一女の母でもある科学ジャーナリストがユーモラスに解説します。最新の研究によって導き出された子育て法も登場し、知的好奇心を刺激されること請け合い。日本人が読んでも共感できる事例が満載です。


構成/さくま健太