性的少数者を差別している社会を変える「当事者」は誰?


人権なんて気にしないでいられる人の周りには、性的少数者だから、女性だから、肌の色が違うから、障害があるから、外国人だからなどの理由で、無視されたり攻撃されたり排除されたり軽んじられたりしている人がたくさんいます。けれど、気にしないで生きていられる人には、「みんな自分と同じ」にしか見えません。誰の命も等価で無二であるという意味の「自分と同じ」ではなく、別に誰も困ってなさそうじゃん? という意味の「自分と同じ」です。他人の苦しみが分からないだけでなく、自分が守られているということにも気づかない。人権について無知であるとは、そういうことです。

写真:Shutterstock

しかし誰しも、視野狭窄に陥ることは避けられません。人生は一度きりで、自分の体しか生きることができませんものね。だから、すべての人の命と尊厳の価値は等しく、かつそれぞれにかけがえのない無二のものであるという普遍的な事実をきちんと理解していなければならないのです。そして、差別や暴力には、はっきりとNOと言う。ターゲットにされたのがたとえ自分の家族や友達でなくてもです。

 

荒井氏は、同性カップルについてこう言いました。
「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいたらやっぱり嫌だ」
「もちろん人権や価値観は尊重するが、心の底では嫌だ。同性婚を認めたら、国を捨てる人が出てくる」

荒井氏を更迭した岸田首相はこう言いました。
「国民に誤解を生じさせたことは遺憾だ。不快な思いをさせてしまった方々におわびを申し上げる」

あなたは、どうですか。赤の他人も、自分や自分の大切な人と同じように大切にされるべき存在だと思いますか。自分はマイノリティ当事者じゃないしな……と戸惑う人は、視点を変えてみましょう。性的少数者を差別する社会を放置している当事者は、あなたです。これはあなたの問題なのです。「誤解と不快」「理解増進」などの狡猾な言い換えを許さず、LGBT差別禁止法と同性婚の1日も早い実現を求めましょう。

 


前回記事「「能力で選んだら男ばかりになりました」と言っているうちに誰もいなくなる日本【小島慶子】」はこちら>>