キャリア研究の第一人者である、高橋俊介先生。前回の記事では、キャリアに勝ち負けはなくあるのは「幸せなキャリア」か「不幸なキャリア」であり、決めるのは自分の心のモノサシであると教えていただきました。「好きなこと」「憧れの仕事」が「自分に向いている仕事」であるとは限らないという衝撃の言葉も!

今回は、「幸せなキャリア」を築くために必要なことは何なのか、詳しくお聞きします。

前回記事
キャリアに勝ち負けなし! あるのは、「幸せなキャリア」と「不幸なキャリア」【高橋俊介氏インタビュー】>>

キャリアは最大約8割が「偶然」でできている?! 「幸せなキャリア」を引き寄せるために大切なこと【インタビュー 高橋俊介氏】_img0
 

高橋俊介氏
1978年東京大学工学部航空工学科卒業後、日本国有鉄道に入社。1984年プリンストン大学院工学部修士課程を修了し、マッキンゼーアンドカンパニーを経て1989年ワイアット(現ウイリス・タワーズワトソン)に入社。1993年代表取締役社長に就任。1997年に独立、ピープルファクターコンサルティングを設立しコンサルティング活動や講演活動、人材育成支援等を行う。2022年4月より慶應義塾大学 SFC研究所上席所員。主な著書に『キャリアショック』(ソフトバンククリエイティブ)、『自分らしいキャリアのつくり方』(PHP新書)、『キャリアをつくる独学力――プロフェッショナル人材として生き抜くための50のヒント』(東洋経済新報社)など。

 

自分らしい働き方ににじり寄って、キャリアを形成していく


――前回の記事で、「好きなこと」「憧れの仕事」が「自分に向いている仕事」であるとは限らないとおっしゃっていました。これについて、もう少し詳しく教えてください。

高橋俊介氏(以下、高橋): たとえば、ワインが好きでワイン関係の会社に勤め、店頭での販売に携わったとしましょう。大好きなワインの仕事をしているのに、なぜかモヤモヤするし、成果も上がらない。好きな仕事をしているはずなのに、バーンアウトしてしまった。そんなケースは、「自分をドライブするもの」「動機」と、職種や仕事への取り組み方に相違があるからかもしれません。これが、「好きなことだが、自分に向いている仕事ではない」という状態です。自分らしいキャリアを築いているとも言えませんよね。

――なるほど……。では、そのような状況にある方はどうやって自分らしいキャリアを形成していけばよいのでしょうか。

高橋:「自分らしい働き方」ににじり寄っていけば、自分らしいキャリアに近付くことができます。自己理解を深め、「何が自分をドライブさせるのか」「何が動機となるか」を知るのです。目標を達成することに喜びを見出す、新しいことに挑戦するとワクワクする、人と関わるのが好き、人の役に立ちたい、など、さまざまなものがあるでしょう。

もし自分が「販売の仕事は好きではないけれど、挑戦することは好きだ」と感じるなら、自分で新しい企画や販売方法を作り出し、挑戦してみる。「人の役に立つことが好きだ」と感じるなら、顧客との接点を増やし、より顧客の好みに合うワインは何か徹底的に調べ、提案してみる。そうやって、自分らしい働き方、自分らしいキャリア形成に“にじり寄る”ことができます。

好きでないことを仕事にしている方にも、同様のことが言えます。たとえ興味がない分野の仕事でも、自分をドライブするものを見極め、それを活用して「自分らしい働き方」ににじり寄ることで、幸せなキャリア、自分らしいキャリア形成につながります。

キャリアは最大約8割が「偶然」でできている?! 「幸せなキャリア」を引き寄せるために大切なこと【インタビュー 高橋俊介氏】_img1
「自分を突き動かすもの」を、皆さんはご存じですか? 写真:Shutterstock


“ダークサイド”に落ちないために、自分の弱みを知ることも大切


――「自分をドライブさせるもの」「動機」とは、自分の強みのようなもののことでしょうか。

高橋:そうですね、強みとも言えます。また、私は「動機」を活用した能力発揮を「勝負能力」と呼んでいます。「勝負能力」を使って仕事をすれば、成果も上がりやすく、「やりがい」も感じやすくなります。皆さんには、ぜひ自分の「勝負能力」をいまの仕事に行かせているか、確認していただきたいですね。

しかし、人間、強さだけを武器に戦っていると失敗したりうまくいかなくなったりと、“ダークサイド”に堕ちてしまう可能性があるものです。自分の強みだけでなく弱みも知り、そこを補いながらキャリアを形成してくことも大切です。

 
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