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近年、動物を酷使することへの批判が全世界的に高まっており、その流れは養鶏事業にも及んでいます。大量の鶏卵を安い価格で生産するには、鶏を狭いケージに押し込んで飼育する必要があります。しかしこうした手法は、全世界的に許容されなくなりつつあり、欧州では従来型の飼育方法は禁止となりました。

日本が卵を安く提供できていた背景には、従来型の生産方法を続けていることが大きく関係していますが、日本もこうした流れとは無関係ではいられません。日本でも動物に優しい飼育方法が導入された場合、飼育コストの大幅な上昇が懸念されます。

 

こうした状況を総合的に考えると、鳥インフルが収束しても、今後、鶏卵の生産コストは増加する一方です。結果として卵の価格も下がりにくいとの予想が成立します。

これまでの日本社会は、安いことは良いことであるとの価値観が根強く、鶏卵に限らず、あらゆる分野で、多くの事業者がコスト削減に邁進してきました。
 
確かに消費者にとって価格が安いことは良いことですが、逆に言えば、事業者が価格を優先するあまり、過剰なコスト削減に走っていたのが現実です。コスト削減は人件費にも及びますから、これが私たちの賃金を下げるという悪循環をもたらしてきたと考えることもできるでしょう。

これからの時代は、品質の良い製品を相応の価格で売っていくというやり方にシフトする必要があり、そうしなければ、企業は業績を拡大することができません。業績が良くならなければ、当然の結果として、私たちの給料も低いままとなってしまいます。

鶏卵の価格上昇は、価格をめぐるパラダイムシフトを象徴する出来事であり、私たちはこの現実について、しっかり受け止めていく必要がありそうです。

参考:JA全農たまご株式会社「最新のたまご相場」

 

前回記事「「今、家計が苦しい本当の理由」この10年で電気代はどこまで上がった?」はこちら>>

 
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