――めちゃくちゃ耳が痛いです(笑)。
フフフ。きっと世界の捉え方が違うんでしょうね。自分と世界のあいだに距離があると思っていると、そういう考え方になるのかも。対岸に「世界」があって、向こうから誰かが何かを持ってきてくれると考えているのかなあ。
でも、そうじゃないじゃん。私も、あなたも、みんな世界の構成要素の一つ。世界の中に自分がいるんです。そう考えたら、他人のことを自分が装着するアイテムの一つだなんて思わないでしょ? 自分の周りをぐるっと世界が囲んでいて、中心軸に自分がいると考えた方がいいと思いますよ。
――まだスーさんの言ってることを全部は理解できませんが、噛みしめたいと思います。最後にもう一つだけ聞かせてください。スーさんは生きるのは楽しいですか。
楽しいですよ。希死念慮ゼロ!! ゼロオブゼロです。
――清々しい。
でもね、誰でも調子いいときも悪いときもありますから、どこかの時点の自分をデフォルトだと思わない方がいいんだな。「これが私の正常値」ってデフォルトを決めると、そこから上がったり下がったりすることで、気持ちが変に舞い上がったり落ち込んだりする。デフォルトさえ決めなければ、気分が沈んでも、今はそういう状態なんだと思うだけで、別に自分を責める必要もない。
上がったり下がったりするのが人間ですから、気分が浮き沈みするのも自然なこと。そういう自分も含めて自分で「おつかれ」とねぎらってあげてほしいです。
ジェーン・スー
1973年、東京生まれの日本人。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『私がオバサンになったよ』(幻冬舎)、『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『きれいになりたい気がしてきた』(光文社)など著書多数。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』放送中。TBSの堀井美香アナとのPodcast番組「ジェーン・スーと堀井美香のOVER THE SUN」は毎週金曜日17時配信。最新刊は『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)。
<書籍紹介>
『おつかれ、今日の私。』
ジェーン・スー 著 1540円(税込)
マガジンハウス・刊
理不尽な出来事に心を削られたり、自分の不甲斐なさに落ち込んだり。いつも何かと疲れる日々に、たまには誰かに「おつかれさま」とねぎらわれたい。そんな、つい頑張りがちな人必携の一冊。まるで湯船に浸かった時のように、読めば気持ちがほっと緩んでいくエッセイ48篇を収録。
撮影/赤松洋太
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵
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