本のテーマは、「人間・稲盛和夫の情熱」


「こんな人がいるのか……」。“経営の神様”だけれど、哲学者のような、思想家のような、稲盛さんという大きな大きな存在を知ってから、私は著作をたくさん読みました。それから数年後の2021年、元上司を通じて、稲盛さんの業績や思想を紹介する京セラの施設「稲盛ライブラリー」とご縁をいただくことに。稲盛さんの思想を、まだまだ多くの人に広めていきたいと、稲盛ライブラリーの方がおっしゃったことに意を強くして、新しい本『熱くなれ 稲盛和夫 魂の瞬間』の企画書を出させていただきました。

稲盛さんが企画書を読んでOKをくださったと聞いたときには、なんだかもう、ありがたいやら恐れ多いやら。稲盛さんは、京セラの製品を「手の切れるような製品」でなくてはならないと言い切っています。見るからに鋭い、研ぎ澄まされた完璧なもの。稲盛さんのお名前を冠した本を出す以上、私が作る本もそんな「手の切れるような本」にしないとマズイ。絶対にマズイ。

 

そんな身の引き締まる思いで取り組んだ本のテーマは、『熱くなれ』というタイトルから伝わるとおり、“人間・稲盛和夫の情熱”です。企画を立てていた頃、コロナ禍の閉塞感もあり、「がんばっても報われない」というムードが街に漂い、また「がんばらなくていい、無理しなくていい」という時代の流れもありました。
もちろん、嫌なこと、自分を蝕むようなことにがんばる必要は微塵もありません。
でも、自分の情熱を燃やしたい、誰かのためにがんばりたい、と実は思っている人もたくさんいる気がしていました。

写真:Shutterstock

「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」とは、稲盛氏が編み出した有名な方程式です。能力だけでなく、考え方や熱意がどれほど大切か。
自分の仕事に燃えるような情熱を持って取り組むことで、仕事だけでなく人生までも輝くことを、稲盛さんはさまざまな講話や勉強会、書籍などで人々に伝えてきました。

この本では、そんな稲盛さんの情熱の思想をあらためて紐解きながら、その熱を直に浴びてきた13人の人々――共に闘った京セラ、KDDI、JALの社員、経営者仲間、経営塾の門下生など――にインタビューしています。稲盛さんの思想と、それを稲盛さんが実践した現場の証言がセットという、今までになかった本となりました。