閉経前からできる予防は、生活改善とセルフレコード。体重と血圧の経年変化を把握しよう!
血管系の病気を予防するために、閉経前からできることは何があるのでしょうか?
「大切なのは、まずは食事や運動といった生活習慣の見直し。そしてもうひとつやってほしいのが、体重と血圧を測る習慣をつけて、それを記録して変化を知る『セルフレコード』です」
血管系の病気の予防のための「食事」「運動」「セルフレコード」について、詳しく見ていきましょう。
①食事
1)魚食をまず1番に!
「タンパク質摂取を心がけようとすると『肉を食べなくては!』と思いがちですが、血管の健康を考えた場合は魚介が圧倒的に有利です。魚も良質なタンパク質を含み、さらにEPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)という血中脂質バランスを改善し、血管をしなやかに保つ成分が豊富に含まれます。ビタミンDやカルシウムも豊富なので、骨の健康にもつながります」
2)発酵食品×食物繊維で腸内環境をよい状態に保つ!
「自分が1日にどんな栄養素をどのくらい摂らないといけないかを知っていますか?
今の自分の食生活を棚卸しして、必要な栄養素が足りているかをチェックしましょう。不足する栄養素を自分が取りやすい食品を考えて取り入れ、習慣化していきましょう。腸内環境をよい状態に保つ食事は、血管にもよい食事です。今からよい食事を習慣化できたら、それは一生の財産になります」
①発酵大豆食品……納豆・みそなど
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンと分子構造が似ているエクオールのもととなるイソフラボンを摂取して腸内環境を改善。
②発酵食品……ヨーグルト、チーズなど
腸内細菌の多様性を促すには、善玉菌を多く含む発酵食品と、善玉菌の餌になる食物繊維を一緒に食べると効果的。カルシウムが豊富で、血管と同じく閉経で衰えてしまう骨にもいい食材。
③食物繊維……アボカド、ゴボウなど
食物繊維は水溶性(糖質の吸収を抑える)、不溶性(善玉菌の餌になる)の2種類。どちらもバランスよく含む食材。野菜全般を積極的にとれば、食物繊維のほかにビタミン類も摂取できる。
②運動
1日8,000歩キープを目標に!
一番いいのは歩くことを習慣化すること。生活習慣病予防なら1日8000歩、骨密度維持のためには10000歩を目標に歩きましょう。歩くときは少し早足で大地をしっかり踏みしめながら。スマホを見ながらのダラダラ歩きでは運動にならないのでご注意を!
③セルフレコード
体重と血圧の変化を知る
「40代に入ったら、閉経前のゆらぎ期に向けての準備として、体重や血圧の測定を習慣づけて記録し、変化を把握しておくことが大切です。
健康診断の結果がA判定だったから大丈夫と思っても安心は禁物。過去の診断結果を見て、経年変化に注目してください。血圧のベースがじりじり上がっていたり、以前は低かった悪玉コレステロールが130(正常高値)ぐらいになっているなど、わずかな変化に気づけることがあります。
健康診断で血圧が高めと指摘された方は、自宅で定期的に血圧を測定してください。血圧を毎日測るのが難しい方は、数日に1度または週末だけでもいいので、起床時・寝る前の1日2回自宅で測定を続けてみてください。変化を察知できれば、早めに生活習慣を見直し、問題点を修正していけます」
閉経マネジメントは難しいことではありません。不要な心配を増やさないために、日々の生活の中でできることがたくさんあります。正しい知識を得て、それを早いうちから習慣化することで、未来の健康につながるのです。
『40代から始めよう!閉経マネジメント』
吉形 玲美 (著)
「閉経マネジメント」とは、変化の大きい閉経前後の身体の変化に備え「自分の体を積極的にマネジメントする方法」のこと。その柱は、①女性ホルモンのコントロールと、②女性ホルモンの減少によって影響を受ける「骨の強さのマネジメント」の2つ。
40代以降の女性のライフステージを「プレ更年期」「更年期」「ポスト更年期」の3つに分け、それぞれのライフステージで何をすればいいかをわかりやすく解説しています。もっと知りたい人のためのQ&Aや、患者さんの体験記もたっぷり盛り込んだ、いつまでも健康な女性でいるための方法がギュッとつまった1冊です。
吉形 玲美 (よしかた れみ)
医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
産婦人科臨床医として医療の最前線に立ち、婦人科腫瘍手術等を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院産婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。月経不順、妊活、更年期など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。’22年7月『40代から始めよう!閉経マネジメント』(講談社)を上梓。
取材・文/熊本美加
構成/宮島麻衣
イラスト/shutterstock
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