日本に住む外国人の中には、働く権利や健康保険に入る資格がなく、実質ホームレス状態になるしかない、という人たちがいます。在留資格が切れ、「仮放免」という状況になった人たちです。仮放免の人たちには、命の危険があり母国にいられなくなった人、親が外国人だけれど自分は日本で生まれ育ち、日本語しかしゃべれないという人たちもいます。前回に続き困窮する外国人支援をするつくろい東京ファンドの生活支援スタッフである大澤優真さんに、仮放免の人たちが置かれている状況や、日本の入管(出入国在留管理庁)の問題点について伺います。全三回の二回目は働くことが許されない現状についてです。


第1回「ただ生きのびるために日本に逃れてくる外国人を知って欲しい【入管法改正・仮放免の現実】」>>

第3回「自分が断ったら、この人は死んでしまうかもしれない。公的制度の空白を埋める現場の限界【入管法改正・仮放免の現実】」>>

 
仮放免とは?外国人が日本で生活するためには、「在留資格」が必要です。在留資格は用途によって29種類に分かれており、それぞれ期限があります。その期限が切れると、「オーバーステイ」という状態になり、原則として入管施設に収容されます。しかし、健康に問題があるなど様々な理由で一時的に収容を停止し、拘束を解かれた状態を「仮放免」といいます。
写真:Shutterstock


働けない=収入を得る術がない。生きていくことができない人たち
 

——仮放免の方は、健康保険に入る資格、働く権利など、あらゆるものが認められていません。NPOの方がシェルターなどのサポートをされているとはいえ、それがなければ実質ホームレス状態になって、飢え死にするしかないですよね。

大澤優真さん(以下:大澤):よりどころがないんです。足元がグラグラ。どうやって生計を立てているかというと、多くは親族、友人知人からの借金ですね。その期間が例えば1年とか決まっているならいいんですけど、5年10年となると、周りも支え続けるのは難しい。当然、断られることも出てきてしまう。


大澤優真さん1992年千葉県生まれ。一般社団法人つくろい東京ファンド生活支援スタッフ 。 主に仮放免の状態にある外国人の生活支援を担当。日々困窮者の支援に奔走する。NPO法人北関東医療相談会事務局スタッフ・理事も務め、大学で教鞭をとる(公的扶助論・福祉制度論)。社会福祉士。著書に『生活保護と外国人 「準用措置」「本国主義」の歴史とその限界』(明石書店、2023年3月発売)がある。
 


——仮放免になると、ずっと働いていた方がいきなり働くことができなくなり、収入を絶たれてしまうわけですよね。その人たちは本来働く能力はあるのに。自分で生計を立てるということは生きる力や尊厳にも繋がりますし、人に頼み続けることがあまりに続くと心が削られていきますよね。

大澤:おっしゃる通り、働くことは人間の尊厳だと思っています。働きたくないから働かないというのではなく、働きたいし働ける、それによって地域社会にも貢献したいという人を働かせないというのは、人間本来の尊厳を奪っていることなんじゃないかと。