仮放免の人は「国に帰ってもらう人」。国が働く権利を認めないのはなぜか


大澤:仮放免の方は最初からその状態なのではなく、元々は日本で働いていてそのあと仮放免になるというケースも多いんです。以前出会った中東出身の家族は、在留資格があって、10年近く働いて生計を立ててきたんです。それが1年前くらいに急に在留資格を切られてしまいました。ご家族には小さな女の子と、他に赤ちゃんが2人いて。両親は日本語が話せないので、女の子が代わりに相談しにきてくれました。「私はお金を持っていないです。在留資格が切れてしまってお父さんお母さんが働けなくて、学校のお金も払えなくて、食べ物もなくて、赤ちゃんが病院に行きたいけどいけないんです。最近40度の熱が出たんだけど、行かせてあげれなくて、でもなんとか頑張りました。私たちを助けてください」と言うんです。

収入を絶たれ困窮するだけではない。働く尊厳を奪われる外国人の声【入管法改正・仮放免の現実】第二回_img0
外国人の生活支援を担当する大澤優真さん。連日、仮放免の状態にある人からのSOSが寄せられるそう。

——親が働けず生活できない状況を、子どもが把握して説明しないといけないと思うと胸が痛みます。

 


大澤:子供の頃に、お金が無くて困ってますと相談にいったことははたしてあるでしょうか。こんな子供にそうさせてしまっていいのか、と感じました。私たちも全部支援できるわけではないので、できないことはできないと、伝えるしかありません。それに対して「はい、はい」とずっと言っていて。その女の子本人も怪我をしているんです。両親の通訳をして、病院に付き添って、下の子の面倒もみて、自分の怪我も治療できなくて、痛くて泣いている日もある。そんな状況のご家庭ですが、1年くらい前までは普通に生活をしていたんです。

——働いてもらったら、ご本人たちが自力で生活していけるのはもちろん、この社会にとってもありがたいのでは。悪いことは何もないと思うのですが。

大澤:入管の法律を作る立場の人に会うこともあります。技能実習生の問題もあるように、働く人手が足りないところはたくさんありますし、これから人口減少も進みます。仮放免の人は日本語もペラペラで、即戦力になる方たちです。それを踏まえても「仮放免の人が働ける環境が必要なんじゃないですか」、とお伝えすると、「いや、仮放免の人は帰ってもらう人たちなので」と言われ、いつもそこで話が終わってしまうんです。とにかく目の前の都合の悪い人をどう制圧して罰を加えて行くのかだけを考えていると感じます。率直に言うと警察と同じ感覚に見えますね。

——無意識・無自覚だとしても、外国人差別は根底にあるだろうな、と正直感じます。外国人=犯罪をしかねない人、という認識があるように感じて仕方がありません。

大澤:入管施設に収容されている人や仮放免の人は特殊で危ない人たち、という先入観があるのではないでしょうか。