転職を考えている人は過去にも未来にも寄り添ってほしいもの


一方で、転職を希望する人は人生をかけて相談に来ています。転職はキャリアを、人生を、そして幸せを左右する一大イベントです。過去から未来にわたる長期的な自分という物語を描く、とても重大な人生の大きな山場なのです。

その中では期待と不安が交錯して、多くの方がさまざまな心の動きを経験します。普段は客観的に自分を見ることができる方でも、冷静さを欠くことがあります。また、自分の市場価値を意識して動揺しやすくなったりもします。だから、力になってくれる転職エージェントには、今現在の自分だけでなく、過去にも未来にも温かく寄り添って欲しくなります。これが、転職を希望する相談者が描きたい物語なのです。

でも、多くの転職エージェントにはそれは難しいことになります。なぜなら、転職エージェントの多くは「求人情報を駆使して、転職をいち早く達成させる」という短期的な目的意識を強く持たされているからです。この短期的な目的意識が、転職エージェントの多くが描こうとしている物語なのです。


人の脳の限界を超えるのはプロでも難しい

実は人の脳は、目的意識を強く持つと、人に関心を持ったり、共感したりする脳のネットワークが働きにくくなるのです。その結果、相談者に寄り添うことや、傷つかない言葉を選ぶという配慮が難しくなる事があるのです。
こうなると、相談者として訪れたからの多くが、「リスペクトを感じられない」という体験をしてしまうのです。つまり、転職エージェントという役割に実直で、「転職をいち早く!!」という目的意識を持つ真面目な方ほど、転職を希望するあなたに温かく寄り添う事も、あなたを尊重することも難しくなっている…⋯と思っておいたほうが良いのです。

もちろん、中には人の脳の限界を超えて相談者の過去と未来にも向き合おうとする方もいらっしゃいます。ですが、私の知る限りそのような方の多くが疲弊してしまいます。人の脳の限界に挑戦しているようなものなので、そのご負担は察してあまりあります。人の限界を越えるのは、カウンセリングのプロでも難しいのです。

 


転職エージェントの面談の前に、公的な相談も使ってみてください
 

転職支援の企業は、よく「転職のプロにお任せ!!」のような広告を出しています。頼りになるプロが上手に導いてくれると、ついつい期待してしまうことでしょう。ですが、彼らにゆっくりと寄り添ってもらうことや、リスペクト溢れる温かい時間を期待するのは難しいこともあるかもしれません。心理学的にはご一緒に描ける物語の材料を揃えるために、転職エージェントは転職達成に必要な情報の提供者であり、そのための現実的な地図を描いてくれる存在として付き合うのが良いでしょう。

では、私たちはどこで誰に私たちのキャリアや人生を相談すればよいのでしょうか? 相談には相性もあるので答えは一つではありませんが、心理学の視点からは同じ物語を描こうとしてくれる方、つまり過去にも未来にも寄り添ってくれると期待できる相談機関が良いでしょう。


そこで、私は公的なサービスを推しています。公的なサービスは国民・市民であるあなたの幸せを目標としたサービスです。あなたという人に関心を持ち、人をリスペクトし、あなたに寄り添ってくれるはずです。相談の担当者は、あなたの生き方、活かし方を一緒に考えてくれることでしょう。


転職を考えているあなた、転職エージェントに相談する前に、まずはキャリア形成・学び直し支援センターなどの公的な相談サービスを使ってみてください。お勧めです!!


厚生労働省委託事業
キャリア形成・学び直し支援センター(キャリガク)

「個人(在職者)の方」「企業・団体の方」「学校関係者の方」を対象に、ジョブ・カードを活用して様々なキャリア形成支援や学び直し支援を、無料で行っています。

 

文/杉山崇
イラスト/池田マイ

「転職エージェント面談」で複雑な気持ちに陥るのはなぜ?転職支援サービスの心理学的に上手な使い方_img0
 

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