「人間ドック」は、日本独特の文化?


山田:そうですね。基本的には、「健康診断」や「がん検診」を受けていれば、さらに「人間ドック」を受ける必要性は、必ずしもない、ということになります。実は、「人間ドック」というのは日本特有の文化で、アメリカ全土で広く推奨されているものではありません。

編集:なるほど。年齢を重ねると「人間ドック」の話題が出てくることも多いのですが、日本特有の文化である、というのは知りませんでした!

 

山田:「人間ドック」は「健康診断」と「がん検診」を含めて提供しているものも多く、「一度にまとめて受けられる」ということで、利便性が高いと感じられて、好まれているかもしれませんね。

編集:たしかに、便利ですよね! ただ、検査項目は多いなぁ、という印象です。

山田:そうですね。その検査項目の中には、根拠が確立されていないものや、必ずしも必要でないと思われる検査が、過剰に含まれている場合もあります。過剰検査の弊害も知っておいていただければと思います。

編集:たくさん検査項目があったほうが、「なんとなく安心」と思ってしまいますが……。

山田:「エビデンスがなくても、検査をするだけなら害がないのだからいいではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、検査をすることで一定の確率で「異常」と判定される方が生まれますよね。

そのような人は病院に行き、追加検査が行われます。検査は場合によって、体に負担がかかるもの、合併症の可能性もあるかもしれません。その分だけ、検査の合併症で苦しむ人が増えるわけです。また、検査にかかる経済的負担、検査で「異常」と判定されることにより生じる心理的負担もあります。

編集:なるほど……。「人間ドック」は便利ですが、過剰検査が含まれている場合もある、という視点を持つことも大事ですね。今日はあらためて、「健康診断」と「人間ドック」それぞれについて、あらためて詳しく学ぶことができました。「健康診断」で異常が出たらきちんと受診する、「がん検診」は欠かさず受ける、ということを徹底したいです。ありがとうございました!

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写真 Shutterstock
構成/新里百合子

 


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