ここでコラムを書かせていただくようになって、ファッションへの熱い思い(というか、主に物欲)についてあーだこーだと思うことが増えてきました。特にこのところよく考えるのが、私個人のおしゃれの遍歴や気分の変化について。

ミモレでも「おしゃれ更年期」のテーマが組まれていますが、私も自分のおしゃれの変化については日々感じているところ。今のようなシーズンの変わり目は、特に自分の“ご様子”と気分の変化をヒシヒシと感じます…。去年はよく似合っていて愛用していたアイテムを着てみたら、あれ、思ってたよりイケてなかった?? 今年はそれほど着ないかもしれないなあ…と思ったり。自分でもよく似合っていると思っていたアイテムに限って、そういうプチ変化が訪れると微妙な差が浮き彫りになったりして、小さく自信を失ったりするものです。

あともうひとつ、自分の変化を否応なく突きつけられるのが、いわゆる「定番」と呼ばれるアイテムを着たとき。私の場合、トレンチコートを通じて自分の変化に気づいてしまったのです…。でも、今回の変化は悪くない変化というか……はっきり文字にいたしますと「加齢をポジティブに受け入れられる変化」だったのであります!!! ふぅ~~(言ったった感、半端なし)。

何度となくこのコラムにも登場している、大好きショップのひとつドゥロワー。そこで、行くたびに気になっていたのが、オリジナルのトレンチコート。定番として長く愛されている、ドゥロワーのエッセンシャルズともいえるアイテムです。ドゥロワーに通い始めたころからですから、思えば10年以上も気になり続けているアイテムでした。初めて試着したときは、まだ30代前半だったですかねえ……。どうにも私には、かっちりした肩のラインや長めの丈が似合わず、違うスプリングコートを買ったり、ライトトレンチを買ったりして、お茶を濁してきました。シンプルで佇まいが美しく、着こなしたいイメージもばっちりあるのに、自分らしくこなす自信が持てないというジレンマ。そのころ、他ブランドの名品トレンチも着てみましたが、やっぱりどうにもしっくりこない。今年こそは、今年こそはと、あちこちでしつこくトレンチの試着を繰り返していました。

そして、おととしの秋冬シーズンの立ち上がり。やっぱり本格的なトレンチが欲しいなあ、と改めて思い、またまたドゥロワーで試着をしてみました。

す・る・と。

突然、借り物感ゼロの、自分らしいトレンチ姿が鏡の中に! あああ、やっとこの日がやってきたのですね、神様。ありがとうございます。わ、私、トレンチを買いますっ!! 

そんな長い片思いを経て、トレンチがワードローブに加わり毎日がバラ色に(やっぱり大げさ、でも結構本気です)。いやあ、トレンチって便利なんですね。何度もトレンチをテーマにファッションページを作ってきたっていうのに、改めて実感する日々ですよ。

先日、寒さが戻った日のスタイルです。フューシャピンクのニットはカシミアで、春気分は出しつつも体に優しく。トレンチコート、ニット/ドゥロワー パンツ/エンフォルド バッグ/セリーヌ パンプス/ピエール アルディ

何がいいって、トレンチっていうトラッドで、正統派で、上品で、かっちりとしたパッケージに包むことによって、ちょっとパンチの効いた色や柄などのアイテムがぐんと取り入れやすくなるところ! 派手な色や柄が好きなくせに、ド直球で着こなすのにはやや度胸が足りない私。そんなときも「この上にトレンチを羽織るとバランスが取れて私らしいわ~」と、突然自信をもって着こなすことができるのです。あとはもちろん、ボーイッシュなアイテムとも相性抜群ですしね!

2年前にドゥロワーで買ったスカートが主役。シルク素材なのでタイツ合わせも可愛く、1年中着ています。トレンチコート、スカート/ドゥロワー スウェット/アストラット バッグ/ピエール アルディ サンダル/セリーヌ

そうそう、話を戻します。トレンチ独特のデザインである高めの襟と肩章付きの肩は、いずれも丸みのないスクエアなシルエット。そこから短くて太い首と、その上にこれまたまん丸の顔がのっていたので、どうにもしっくりこなかったのではないかな、と自己分析しています。ところが、これまた加齢ちゃんにより(少しでもポップになるよう、ちゃん付けしてみました)、あちこちの肉が少しずつ削げてちょっとだけすっきりしたこと、本人の存在感と迫力がアップし、正統派トレンチに負けないだけのキャラクターを打ち出せるようになったことの2点により、自分のおしゃれとして楽しめるようになったのかもしれません。

一難去ってまた一難、という感じで、日々変化するおしゃれの悩みですが、でも似合わなくなったアイテムと同じだけ、似合うようになっているアイテムもあるはず! そう信じて、これからもいろいろなファッションを(=お買い物を)楽しんでいきたいと思いまーす。