演出は、製作側がきちんと方向性を持っていることが何より大事

 

ーー松也さんの演出は國矢さん、蔦之助さんからみていかがでしたか。

國矢 今回、僕は立師(立廻りの振り付けを考える役職のこと)として打ち合わせの段階から参加させていただいて、松也さんには最初から“こうしたい”という明確なビジョンがあって、それをみんなに伝えて形にしていくところを見ていたのでね。みんなが気がつかなかったことを言って、「それいいね」となるようなこともすごく多かったし。気持ちと、それを伝える力を持って、みんなをきちんと納得させて進められる人はなかなかいないと思いますから。これからもどんどんやっていただきたいですね。

蔦之助 (松也さんの歌舞伎自主公演の)『挑む』を立ち上げた時からずっとリーダーとして我々を引っ張ってきてくださったけど、やっぱりリーダーシップというか、どうやったらみんなが動くかというのをもともとわかってらっしゃる方なんですよね。松也さんはなんというか、自然と人がついてくる方なんです。そういう、持って生まれた何かがあると思う。それが演出というポジションではすごく活きていると思います。

舞台って、演出や座頭がしっかり舵を切ってくれないと、みんなどこへ進んでいけばいいのか分からない。松也さんはそこをはっきり示してくれるので、みんなが迷うことなく一つの方向へ向かっていけた。そこはすごく感じましたね。

 

ーーお二人の言葉を聞いて、ご本人としてはいかがでしょう。

松也 まあ、そうでしょうね(笑)。

ーー(笑)。

國矢 そこが大事だからね。そうくるだろうなとは思った(笑)。

新作歌舞伎『刀剣乱舞』尾上松也・澤村國矢・市川蔦之助インタビュー「“難しさ“を避けて、ただ観やすくするのでは意味がない」_img3

 

松也 まあでも、僕もいろいろな先輩の舞台に出演させていただき、自分でも歌舞伎の自主公演をしながらそこでいろいろな失敗を重ねて今があるので。今回、自分で演出したいと自分から言える状態になっていたのはそういう経験があったからだと思いますし、そういう意味では、自分でしっかりとした演出プランを立てられる自信もあるにはありました。

いろいろなやり方があるので一概にこれが正解と言えるものではないですが、僕は役者として、演出というのは制作側がきっちりとしたプランや方向性を持っていることが何より大事だと思います。それがあることで、みんながそれぞれ何をすべきか考えながら一緒に作っていくことが出来る。そこが明確じゃないと、その作品を面白いと思える可能性も出てこないと思っていましたので。