――ここまではブラジルとのカルチャーショックについてでしたが、次はパートナーが車いすユーザーという点で、カルチャーショックのような違いを感じたエピソードはありますか。

A子さん:車椅子ユーザーと生活していると慣れてしまうのですが、車椅子の方も当然ながらコンディションが人それぞれで、同じ病名でもあの人はここまできるけれど、この人はそうじゃないといった振り幅が大きいです。
彼も最初、自分の生まれ持った障害について詳しく教えてくれるわけではなかったので、最初一緒に住み始めた時に、どこまではできて、どこからは助けがいるんだろうといったところの把握が結構難しかったです。男性なのでなるべくプライドを傷つけないように、その辺を探っていくのが最初は大変だったということはありました。
ただ、彼は腕力がある方なので、比較的一人で何でもこなせちゃう方なんです。

腕の力だけで階段を上り下りできるイギニョさん。

あと、私は2人の子連れで今のパートナーと一緒になったのですが、家事が基本ワンオペになる点は大変です。よそのお宅の旦那さんなら子どもの送り迎えもしてもらえるのにな、と思うことはありますね。最初から車椅子ユーザーと暮らすというのはそういうことだとわかってはいたのですが、しんどいなと思うところはあります。


――あと、車椅子ユーザーに対する日本とブラジルのリアクションの違いという投稿が印象的でした。

ブラジル人は親切だけど⋯⋯「日本のスタイルが合ってる」というイギニョさん。

A子さん:確かに彼と歩いていると、周りの人たちが最初は気になって見るけれど、すぐ見て見ぬふりをしているな、と感じます。日本人的な礼儀なのかなって思いますが、日本でも外国の方は親切に声をかけてくれたりしますね。
ブラジルだとこちらが全然困ってなくても「何かしましょうか?」「手伝おうか?」と声をかけて近寄ってきてくれるので、私はほっこりしていい国だな〜と思うんですけれど、本人(イギニョさん)は「別にそこは求めていない」ってクールなんですよね。

――そこが、国民性よりも個人の性格の方が強いことがわかるエピソードでおもしろかったです。「日本人のクールさが自分には合ってる」っていうところですね。

 

A子さん:日本人の「時間をきっちり守る」「約束は守る」みたいなきちんとした国民性に彼は魅力を感じていますし、何より日本の交通機関の便利さにすごい魅力を感じていますね。
あとやっぱり安全面です。車椅子ユーザーでも夜にコンビニに行けたり、街中に段差が少なくて移動しやすいというのがすごい魅力だなと言っていますね。

――ブラジルや車椅子ユーザーとのカルチャーショックについて描かれていますが、描いている点で心がけていることはありますか。

A子さん:押しつけがましい情報系漫画にならないように、とは思っています。私の漫画は、ステップファミリーや外国人との生活とかの情報が多く含まれますが、やっぱり個人の人間同士なので、「彼の性格だからこそ」「私だからこそ」の面白エピソードを描いて共感してくれたりクスッと笑ってくれるところがあるといいなと思って描いています。

あと、「日本の方が素晴らしい」「ブラジルの方が勝っている」といった描き方はしないようにしています。カルチャーショック系の話題だと、どうしても「ここは海外の方がいい」とどちらかを否定しがちなのですが、どっちが良い悪いではなく「我々の意見はこうなんだよ」という表現で描いていますね。

――確かに、A子さんの漫画はカルチャーショックを描いていても「どちらかを褒めて、片方を落とす」という印象は全然ないですね。

――最後に、今年の年末にブラジルに行くと描かれてましたがいつ頃行くのでしょうか。


A子さん:年末年始で2週間くらいで行ってくる予定です。今回は、現地でクリスマスと年末年始を過ごせるので、また漫画に描こうと思っています。

――アップされるのが楽しみです!

* * * * *


ブラジル、車椅子ユーザー、二人の子持ち再婚などのカテゴリーを超えたA子さんの漫画エッセイは、いつも週末に1日か2日で、まさかの一発描きで投稿する「ストロングスタイル」だそうです。ぜひ過去の投稿を遡って一気読みしてみてください。2023年9月時点での最新シリーズはなんと「忘れられない恋」編で、ブラジルも家族も関係ないのですが、ミモレ世代にはキュンとくるはず。

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次回の「SNSで見つけた『バズり人』さん」もお楽しみに!
 

写真/Shutterstock
構成・文/大槻由実子
編集/坂口彩

 


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