私たちは消費者であると同時に労働者ですから、過度な安売りで企業の利益が減ってしまえば、自分たちの給料も減ってしまいます。今の日本で賃金が上がらない最大の要因は、多くの企業が昭和的な安売り販売の発想から脱却できず、賃金を上げる原資を捻出できないことです。
同じ企業でもユニクロを展開するファーストリテイリングやニトリは、時代の変化を着実に読み取っており、価格戦略を大きく変えています。
かつてユニクロでは1000円台の商品がたくさんありましたが、今のユニクロに1000円台の商品はほとんどありません。ニトリも同様で、ネットでは引き続き激安家具を売っているものの、店舗にいくと、高級感があり、価格もそれなりに高い家具がたくさん置いてあります。
両社は消費者が気付かないうちに、着実に商品の価格を引き上げており、かつてのような売れ行きを確保できなくても、十分な利益を得られる体質に変えているのです。実際、ファーストリテイリングは、他の大手企業が2%、4%の賃上げで大騒ぎしている時に、最大で40%という度肝を抜く水準の賃上げを実現しました。
かつての日本社会では「赤字覚悟で激安販売」することを賞賛する雰囲気があり、今もそうした企業を高く評価する傾向が一部で見られますが、その裏では低賃金に泣く労働者がいることを忘れてはなりません。もし自分が勤めている企業の経営者が、お客さんに喜んでもらうため「赤字覚悟で商品を提供する」と表明したら、皆さんはどう感じるでしょうか。
本当に赤字になれば企業は倒産してしまいますから、結局は「従業員の賃金を引き下げる」ことにつながるのは明白です。「そんなことよりも自分達の給料を上げて欲しい」と切実に思うことでしょう。
繰り返しになりますが、私たちは消費者であると同時に労働者でもあります。労働者として高い賃金をもらいながら、消費者としては安い買い物をするという矛盾を長く両立させることはできません。
「企業努力」「顧客のために」と言えば聞こえは良いですが、そこで働く従業員の賃金を抑制したり、取引先に無理な値引きを要求すれば、国民全体の給料が上がらず、ますます社会は貧しくなってしまいます。よいモノは高く売って賃金を上げることこそが、私たちに真の豊かさをもたらすと理解する必要があるでしょう。
前回記事「「日本人女性がハワイで入国拒否」の背景とは。海外旅行の常識は変わりつつある?」はこちら>>
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