10kgもの過酷な減量で見えたものとは?


――本木さんは、がんで闘病生活を送る平尾さんを演じるために、10kgも減量されたんですね。

本木:3週間で10kg落とすという目標を勝手に作って取り組みました。最初は半断食みたいな感じでジュースクレンズから初めて、有酸素運動を取り入れて、って様々な方法を重ねてなんとか10kg落としました。体をやせさせていくのは簡単なんですけど、顔には限界があるんです。それはたぶん私が健康体だから、本当に病気でやせ細っていく人の、内側から枯れていくようなやせ方は生易しいものではないということを、逆にまざまざと感じさせられました。

10kg落としただけでは、がんと向き合う人を追体験できるものではないのだけど、少しでも近づきたい、礼儀として自分に課すべきと思ってやりましたが、そんなに甘いものじゃないことが知れ、改めて、その現実を自然体で受けとめていった平尾さんのすごさに心が動きました。

ラグビー・平尾誠二とノーベル賞・山中伸弥の知られざる友情とは【本木雅弘×石田ゆり子】_img0

 

石田:撮影中、どんどんやせていかれるので、リアルに心配でした。最期は本当に細くて……。「大丈夫?」って聞いても、笑いながら「大丈夫!」っておっしゃるんです。プロですから大丈夫なんでしょうけど、すごいなって思いました。平尾さんも周囲に心配をかけないように、いつも柔らかい笑顔でいらっしゃったそうなので、そういうところは重なる部分がありました。

 

――今回、大人の「友情」が描かれていましたが、演じられながら感じたことはありましたか?

本木:私は今回のお話をいただくまで、平尾さんと山中先生のこのような関係性を知りませんでした。お二人とも既に立場のある多忙な方なのに、利害関係なしに友情を結んでいく様子に心地よさを感じました。立場が大きいだけに、きっと抱える孤独も大きかったと思うんです。そこに共感するものがあったののかなぁと。山中先生は、平尾さんが平尾さんらしさを全うするために、平尾さんのもとに遣わされた最後の使者なんじゃないか、という気がするんです。

ラグビー・平尾誠二とノーベル賞・山中伸弥の知られざる友情とは【本木雅弘×石田ゆり子】_img1

 

石田:タイトルに「友情」とありますが、ベタベタな友情を描いているわけではないんですよね。約1年という長くはない時間の中で、お二人が何かに導かれるようにひかれあった、不思議な物語でもあるんです。私が感動したのは、本木さんと滝藤さんがそれぞれの役に入り込んでいて、本木さんなのか平尾さんなのか、滝藤さんなのか山中先生なのかがわからなくなるほどで、とにかくすごいものを見た! という感じがありました。この物語は平尾さんの妻である惠子さんと、山中先生の妻・知佳さんの女性同士の友情の物語でもありました。知佳さんを演じる吉瀬美智子さんは今回初めてお会いしたんですけど、初めてじゃない何かを感じました。私たち夫婦は、素敵な4人組という感じで、撮影期間はとても幸せでした。

――大人になって、親友を作ったり、友情を培ったりするのは難しいと思うのですが、お二人はいかがですか?

本木:私、友達いないんです! 人付き合いがすごく下手で、傷つきたくないという幼稚なところがあります。自分自身がこんがらがった人間なので、誰かと友人になるよりは、大木に抱きついたり、海風に洗われたりしたい、というタイプ。大人の友情以前の問題なので……。話が終わっちゃいましたね(笑)。

石田:私もほとんど一緒です(笑)。私は人より動物が好きで、私にとって動物たちは対等な関係。犬と人間は親子みたいな感じに近いと思うんですけど、猫は一緒に暮らしてくれる感じ。ご飯と清潔なトイレと、安全を確保さえしていれば、ただ一緒にいてくれる存在なんです。でも、大人の友情に絶対に必要なのは、尊敬だと思っています。相手を尊重、尊敬すること。依存するのはよくないなと思っています。

――平尾さんと山中先生は同い年で、40歳半ばを過ぎて出会い、平尾さんは53歳でこの世を去ってしまいました。お二人もいま50代ですが、大切にしていることや、考えていることはありますか?

本木:私は亡き義母の樹木希林さんから、40代後半ぐらいの頃、「ようやくほころびを見せられる年代になってきたね」って言われたことを時々思い出します。年齢を重ねて賢く、立派になっていくということじゃなくて、失敗やほころびのようなほろ苦い経験みたいなものを活かせるようになるんじゃないかと。何かを達観するところにはいけていないのですが、若い時とは別の感覚で、自分のことや人生を面白がれるようになってきたというか……。

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ブラウス、パンツ、ベルト(support surface)、ピアス(SOURCE)、リング(himie)

石田:私はなんか、あらがっている感じがしますね。かっこよく歳を重ねるのが目標なんですけど、最近は目が見えづらくなってきたりして、「生き物として弱いな」と。落ち込むこともあるけど、面白くもありますよね。友情の話でも、いろんな踏み絵を乗り越えて残った人としか仲良くならないというか、この年齢になって変な人はもう寄ってこなくなったような気がします(笑)。若い頃は、若いってだけで寄ってくる人もいましたし。50代になって、人間関係はここからが本物かもしれないって思うと面白いと思う反面、日々試されているような気持ちで生きています。

本木:平尾さんと山中さんは、そういった醍醐味を体現した二人だった、って感じがしますよね。
 


ドラマスペシャル「友情〜平尾誠二と山中伸弥『最後の一年』〜」

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本木雅弘×滝藤賢一
約10年ぶりに民放ドラマに出演する本木と滝藤の初共演で、
知られざる実話をドラマ化!!
躍進する日本ラグビーの礎を築いた男を本木が熱演!
平尾誠二【ミスター・ラグビー】と山中伸弥【ノーベル賞受賞】
ジャンルを超えた親友に訪れた永遠の別れ
2人が全力で駆け抜けた最後の一年を描く
感動の《友情物語》が誕生!

2023年11月11日(土)21:00~22:54放送(テレビ朝日系)
 

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山中伸弥/平尾誠二・惠子著
『友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の約束」』
(講談社文庫) 定価825円

大学時代までラグビーをやっていた山中伸弥は、平尾誠二にずっと憧れ続けていた。ついに叶った対面。友情を温める二人を襲ったのが、平尾誠二のガンという悲劇だった。山中が平尾の闘病に寄り添っていたという事実は、生前はほとんど知られていなかった。本書は、その二人の出会いから死別までを追う、感動のノンフィクションである。


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写真/大門徹
ヘアメイク(本木さん):原田ゆかり(MARVEE)
ヘアメイク(石田さん):岡野瑞恵
スタイリスト(石田さん):藤井享子
編集・取材・文/吉川明子
 

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