未受精卵子を子宮に戻す「年齢限界」を知っておく
日本産婦人科学会によると、2020年の1年間に全国では凍結融解後の未受精卵を使ったART(生殖補助医療)が295件実施され、これによって40人の子どもが生まれています。
未受精卵子の扱いについて、日本産婦人科学会は前述したように、保存期間を「女性の生殖年齢を超えないものとする」と定めていますので、実施施設はその意を汲んで具体的な年齢限界を設けているはずです。たとえば前述の浦安市の事業では、子宮に戻すのは45歳までとしていました。
学会がこうして高齢妊娠の増加を防ごうとするのは、その産科的リスクを考えてのことです。妊娠・出産は、医療のない時代には主に女性の主要な死亡原因でした。
若い人の卵子をもらう「卵子提供」とそのリスク
妊娠することだけを考えれば、たしかに卵子が若ければ妊娠率は高くなるという事実はあります。
たとえば自分の卵子ではなく、海外のエージェンシーを介して若い人の卵子をもらう卵子提供も存在しています。今、不妊治療についてインターネットで調べ物をすれば、ウェブサイトでもツイッター(現:X)などのSNSでも、日本では不可能な手段を海外で実行させてくれる生殖サービスの広告がたくさんあることに気づきます。
国内にどのような議論や規制があろうとも、お金さえ出せば、海外で自由にさまざまな生殖医療技術を使えるのが今の現実です。
卵子を提供された女性の妊娠率は、見事に、卵子を提供した女性の年齢相当となることが知られており、米国が全米のARTの実績をまとめているデータでも、加齢による出産率の低下は見られません。妊娠することだけを考えれば、閉経後の女性でも、妊娠に必要なホルモンを身体に補充し、若い人の卵子提供を受ければ可能です。
しかし、胚を受け止める女性の子宮は老化していますし、血管や心肺機能の老化も進んでいますので、出産のリスクは確実に高まります。
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