夫婦の意外な末路
「カウンセリングには2ヶ月通い、いろんなセラピーを受けました。20万円弱くらいかかりました」
専門的な内容は割愛しますが、このカウンセリングで篤史さんが自覚したのはご自身の「インナーチャイルド」。これは誰しもが心に抱えている幼少期のトラウマによる負の感情で、篤史さんの場合、それは「寂しさ」だったようです。
よって、「寂しい」という感情に振り回されやすく、様々なトラブルを招いてしまうのです。
「カウンセリングでこの寂しさが解消できるわけではありません。でも、寂しがり屋の自分を受け入れることで、メンタルはかなり落ち着き、寂しさに振り回されることもなくなりました。マッサージみたいな一時的なものではないので、心理的なセラピーはすごくコスパが良いと思いました」
篤史さんの精神状態が落ち着くにつれ、別居中の妻とは冷静な話し合いのもと、1話目で述べたように育児の分担などを決め関係は安定。そして現在、なんと妻とは産後以来「一番仲が良い」そうです。
「かなり辛い経験もしましたが、『ちゃぶ台返し』はしてよかったと思います。関係は良好ですが、先のことはあまり考えないようにしています。2年後くらいに離婚はする予定ですが、また何か変化はあるかもしれないし」
篤史さんがご自身の感情と2人の女性に真正面から本気で向き合ったことは、勇気ある選択だったと思います。
ただ、篤史さんは奥さん、娘さん、浮気相手の彼女、この3人を「幸せにしたい」と思うことはなかったのか? と、最後に少し意地悪な質問をしてしまいました。
篤史さんはしばらく沈黙したあと、丁寧に答えてくれました。
「……幸せになってほしいです。そう思っています。でも、本質的に人が人を幸せにしたり救ったりするのは、かなり難しいと考えていて。ただ、金銭面や楽しい時間の共有、安心感やコミュニケーションなど、僕ができる限りのことはしているし、これからもしていきたいです」
感情をあまり表に出さない男性が多い中、篤史さんの率直な言葉からは、男性が結婚に対して抱きがちな不安や不満、男性の生きづらさなどがよく伝わりました。
浮気という側面だけ見ればネガティブな印象が強くなるのは仕方ないですが、しかし育児の時間を意識的にきちんと確保し、家族・夫婦関係をおざなりにせずに深く追求している姿勢もよく分かります。
様々な人間関係において、篤史さんの言う「ぶつかって正解を見つける」のは簡単ではないですし、無傷で済むことでもありません。よって、多くの人はできれば避けたいと考える選択だと思いますが、現在はトラブルが収束し、家族と関係良好ならば、篤史さんは篤史さんなりの正解を見つけたのでしょう。
貴重な経験談を赤裸々にお話しいただき感謝します。篤史さんとご家族の平和を陰ながら願っています。
写真/Shutterstock
取材・構成・文/山本理沙
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