「やりたいことをやる」が、全員を幸せにするとは限らない

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写真:Shutterstock

——とにかく経済成長をして、国全体を豊かに! という大前提が崩れて、それに代わるような正解を探す中で、やりたいこと、好きなことを仕事にするというニュアンスが選択肢の一つとして出てきたということなんですね。

古屋:僕は全然悪いことじゃないと思っています。ただ、やりたいことがある人とそうでない人の間に、大きな差を作ってしまう、やりたいことがないとそもそも競争に乗っかれない、ということに懸念を持っていています

僕は定時制高校でも授業をさせてもらっているんですが、「将来やりたいこと、なりたい職業とかある?」って聞いたときに手を挙げるのって、大体どこで聞いても3~4割なんです。やりたいことがあって、かつそれに自分のスキルがフィットしてます、という人は、本当に一握り。そもそもやりたいことがない、やりたいことがあっても能力がフィットしてない、機会がないっていう方も多いですよね。

——確かに、キャリアにおいては、たまたま配属された場所で頑張る、という経験が正解であることだってあるし、やりたいことを仕事にすることだけが正義ではないはずですよね。

古屋:やりたいことがあって、大学でも専門知識を身につけて大学院まで出た人がいるとします。こういう人にとって、今の「ゆるい職場」というのは最強の環境なんです。耳を傾けてくれる上司に自分の意見を発信しながら、手を挙げてポストを獲得していく。さらに会社の外でも機会をゲットしていく。どんどんスキルが高まるし、年収もスピード感を持って上がっていくかもしれません。

逆に、やりたいことがあっても能力がフィットしていない人にとっては、「ゆるい職場」では何の機会も得られないし、不満が溜まっていって転職せざるを得なくなるかもしれない。だから、「やりたいことをベースにキャリアを考えることは、全員を幸せにするわけじゃない」ということは伝えたいですね。


インタビュー前編
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『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか “ゆるい職場”時代の人材育成の科学』
著者:古屋星斗 日経BP 1760円(税込)

会社で成長実感が持てない若者たちと、若手社員を引き止められない上司たち。豊富な独自調査とヒアリング結果を紐解きながら、若手を活躍させられるマネージャーになるにはどうしたらいいかを著者が考察します。「ゆるい職場」を「ふるい職場」に戻すべきではない理由、世の中の「若者論」の間違いなど、社会や世代への“思い込み”にも気づける一冊。


取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵
 

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