焦った彼女が犯した“ミス”

婚約者であるはずの男性が既婚者だった。その正体に気づきながらも知らんぷりを決めて泳がせる……。それはなかなか難しい技ではないかと思いましたが、やはり美咲さんは、これまでと同じように和也さんに接するのは難しかったよう。

「連絡の取れない時間、帰宅を見送るときなど、どうしても気持ちが不安定になります。それで彼を疑るような言葉や、嫌味っぽい発言もするようになってしまいました。一緒にいても本心を隠せなくて冷たくしてしまったり、喧嘩腰になったりして。

それでも弁護士さんと内容証明を送る準備は進めていたのですが、彼も『美咲って意外とメンヘラなんだね』と私に警戒しはじめて……ついに『やっぱり結婚は考え直したい、距離を置こう』と言われてしまったんです」

やはり和也さんも、美咲さんに正体がバレるのはまずいと感じたのでしょうか。しかし美咲さんからすれば、ここで彼に逃げられたら復讐も難しくなります。また、騙された側の美咲さんが振られるというのも腑に落ちません。

そして、ただでさえ不安定な中、和也さんに逃げられてしまうと焦った美咲さんは、致命的なミスを犯してしまうのです……。

婚約者の「母親が鬱病」は大ウソ...その正体は、既婚者だった。スマホを盗み見た彼女が目にした驚愕の画像_img0
 

「最近の美咲は変わった、元嫁との離婚のトラウマも思い出してしまった云々で距離を置きたいと言われ焦りました。でもそれ以上に……このまま彼と別れたくないと思ってしまったんです。

こんなに好きになった人と、嘘で塗り固められたまま本音も聞けず終わるなんて……本当に悲しすぎて……」

お話を聞いていると、美咲さんは和也さんのことを一途にとても大切に想っていたことがよくわかります。いくら信じ難い事実が発覚しようと、そんな相手をすぐに憎むことも敵対することもしたくなかったのだと思います。

 


しかし結果、美咲さんは離れようとする彼にすがるような形で話し合いの場を設け、これまでの経緯を和也さん本人に話してしまったのです。

「実は、あなたが私に隠していることはぜんぶ知っている。証拠もいろいろ揃っているし、弁護士に相談済み、内容証明を送る準備も済んでいる旨を伝えたうえで、嘘をついた理由、本心を聞かせて欲しいと伝えました。

案の定、彼はかなり驚いて焦った様子でした。でも私に疑われていることはやはり気づいていたようで、すぐにすべて白状しました。子どもは可愛いけれど、奥さんとはもう長年関係が冷え切っている、離婚は本気で考えているし、私への気持ちは本気だとか……。

最初から結婚願望があった私の期待に応えたかった、既婚とバレて振られたり、他の男にとられるのが我慢できなかった……など、彼なりの弁明と謝罪をしていました」

客観的に聞く限りでは、それが彼の本心で、美咲さんへの気持ちが本物だったとしても、これまでの行動はあまりにも身勝手で、誰に対しても無責任だと思います。

けれど、突然婚約が白紙になり、最愛の男性を失いつつある不安定な美咲さんにとって、彼の言葉は対症療法にしかならないことはきっと心の底ではわかりつつ、しかし一時的に心の痛みを和らげる効果はありました。

ここで破局をするという痛烈な痛みを受け入れ、根本解決に向かう。あるいは事態は悪化するけれども、一時的に苦しみを和らげるべく彼を受け入れるか……。こうした選択に迫られたとき、多くの人はどちらの選ぶのでしょうか?

来週公開の続きでは、美咲さんの選択、そして、抜け目のなかった和也さんの信じられない行動について語っていただきます。


写真/Shutterstock
取材・構成・文/山本理沙
 

 

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