ただ、あばたもエクボみたいなもので、住んでみるとそうした不満や後悔もいとしく思えてくるのが持ち家最大のメリットです。入居のタイミングで観葉植物を揃えはじめたのですが、ペットを飼ったことのない僕にとって、部屋に自分以外の命がある生活は生まれて初めて。自ら手をかけ育てる存在が部屋にあるという事実が、この上なく僕を穏やかな気持ちにさせてくれています。最近は、グリーンを眺めながらソファに転がって原稿を書くのが、お気に入り時間。こういう精神的な変化を実感できると、家を買って良かったなと思います。
何よりこれが家を買うということなんだなと実感できた出来事を、締めくくりにお話しさせてください。
先日、買って3ヵ月のソファを焦がしてしまったのです。原因は、電気ストーブを誤ってくっつけてしまったからなんですけど、最初はこの焦げ跡を見た瞬間、ソファを捨てようと思った。昔から僕はリセット願望があって、定期的に引っ越しをしていたのも、仕事をコロコロ変えていたのも、もうこの職場には耐えられない、ここではないどこかへ行きたいという気持ちが強かったから。
でも、こうして我が家を持つと決めたときから、きちんと根を下ろし、あらゆることを受け入れていこうというマインドに変わりつつありました。そして、それがソファの焦げ跡を見て、決心に変わった。こんなひどい焦げ跡ができたら、いくら飽きてもこのソファを他人に譲ることはできないでしょう。だったら、この焦げ跡も自分らしさと割り切って受け入れるしかない。愛着とまではいかなくても、思い出のひとつとして笑えるようになろう。朝起きて、寝ぼけ眼に焦げたソファを見るたび、そんなことを考えています。
僕も40歳。この先、どんどん老いていく。体力は衰えるし、運動機能も低下する。もしかしたら僻みっぽくなったり、気が短くなったり、どんどん自分の嫌な部分を抑えられなくなるかもしれない。その全部に抗うことなんて、きっと無理。多少のメンテナンスで抵抗はしつつも、変わっていく自分を「それが今の自分」とその都度認識を改めていくしかないのです。
半分勢いで購入した我が家がくれたのは、将来の安心でも、安らぎの空間でもなく、どんな自分も受け入れて、落ち込むことなくマイペースに人生を楽しむ心がけだった気がします。
『自分が嫌いなまま生きていってもいいですか?』
講談社・刊 1430円(税込)
※電子書籍は、書き下ろしのおまけエッセイ付き。
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生きづらさを抱える人たちから、共感の声多数! “推し本”著者による人気連載が書籍化。
本屋に行けば「自己肯定感」をテーマにした書籍がずらりと並ぶ昨今。
でも、実際に自己肯定感の低さで悩む人にとっては、自分を愛することの大切さは理解しつつ「そんな簡単に好きになれてたら苦労しないよ…」というのもまた偽らざる本音でしょう。
本書では、自分が嫌いなことには誰にも負けない自信のある(?)著者が、
◆「自分嫌い」を決定づけた、幼い頃からのコンプレックスや苦い経験の数々
◆大人になって日々直面する“自己肯定感が低い人あるある”
◆自分を好きになりたくて、“自分磨き”で試行錯誤した日々
◆そして辿り着いた「これ以上、自分が傷つかないための方法」
を、面白おかしく、ときに切なさも交えて綴ります。
自分のことが好きになれなくても、人に優しくすることはできるし、幸せにもなれるはず。「なりたいものになれなかった」「誰にも選ばれなかった」そんな自分と、折り合いをつけられずにしんどさを抱える人たちの背中に、そっと手を添える一冊です。
構成/山崎 恵
前回記事「リノベした新居に“推し棚”を作ったら、控えめに言って天国だった...! 理想の部屋づくり、40代オタクの僕の場合」>>
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