「次男が大学に進学したら離婚する」そんな数年前の約束の顛末は


夫とは10年前から別居している。息子たちの教育のためだ。夫は子供たちとオーストラリアのパースで暮らし、私は一人で東京に住んでいる。この10年間、渡り鳥のように年に何度も日豪を往復した。

数年前には、離婚の約束をした。過去の傷がどうしても癒えないし何度言っても話が通じないので、もう無理、別れたいと夫に告げて、何度もはぐらかされながらも、ようやく合意に至った。次男が大学に進学したら離婚するつもりで、自立の準備を進めようと約束した。と今数行で書いたけど、話せば万里の長城並みに長くなる。やがてパンデミックが起きた。2年2ヵ月も家族と会えなかった。会えない間に長男は大学に進学し、次男もぐんぐん背が伸びた。今年、次男は志望した大学に進学し、実家を出て遠くの街で暮らし始めた。大学4年の長男は、来年の就職に向けて準備を進めている。息子たちは着実に自立に向けて歩んでおり、間もなく巣立つ。

 

「愛は思っていたより凄まじいもの」早く離婚したいと思っていたのに夫の帰国が待ち遠しい【小島慶子】_img0
写真:Shutterstock

 

で、どうすんだあたしたち。当然別れるよね? ところがだ。ところがそうもいかないのが人生だ。事情もそうだけど心情もそんな簡単には片付かない。それで気がついたら、『徹子の部屋』で黒柳徹子さんに「やっぱり別れないことにしました」と報告していた。収録中に、4年前に出演した時の映像が流れた。「夫と離婚の約束をしているんです!」と語っている。えーと、そうだったんですけど……とカメラがあるのを忘れて徹子さんに超絶個人的な心情を告白。詳しくは4月13日土曜日の昼12時半からBS朝日『徹子の部屋』で再放送されるのでそちらをご覧ください(番宣)。

 

別れないことにしたというと、友人たちは、おめでとう! と言った。相談した時にはぜひ別れた方がいいと言ってた人まで、おめでとうと言う。夫婦が別れないのはめでたいのか。私が彼を許したのがめでたいのか。本当に許したのか。いや、そうじゃなくてみんな、私が嬉しそうにしているから祝福してくれてるんだろう。私は嬉しいのだ。昨夜は唐突に「ちゃんと寝てる? 体重は? 健康第一」と夫にメッセージを送っていた。

死んでほしいと思った相手の健康を祈っている。こんなことが起きるのか、人生は。と他人事みたいに語っている場合じゃない。たった2500字で終わるハッピーエンドなら、生きるのはもっと楽ちんなはずだ。そんなわけで新連載『愛夫記』、次回へと続きます。
 

「愛は思っていたより凄まじいもの」早く離婚したいと思っていたのに夫の帰国が待ち遠しい【小島慶子】_img1