200人以上!「幸せのおすそ分け」で出会えたすばらしい人たち

私は貧しい家庭に育ちました。だから、経済的に苦しい家庭の子どもたちに奉仕するという生き方は、本当に満足できる生き方なんです。誰かに強制されることなく、自分の意志で生きています。私は、八王子つばめ塾のボランティア講師を、「講師が足りないんです!」とか「無料塾の社会的意義とは!」と大声を張り上げて集める気は全くありません。「幸せのおすそ分け」をしているつもりなんです。

自分自身が無料塾の活動を通して、生きがいのある人生を送れるようになれた。幸せになれた。だから「あなたもやりませんか?」と、こういう気持ちで呼びかけています。だって、1円の得にもならないことのために、こんなに毎週真剣にボランティアをしてくれる人なんて、そうそういるものじゃない。八王子つばめ塾を通じて、200人以上のそんなすばらしい人に出会うことができたのです。こんなに幸せなことはありません。特に、講師自身が苦しい境遇を経験して、現在は八王子つばめ塾のボランティアをしているという方の話を聞くと、感激で涙が出てきます。

あなたは自分が親ガチャに当たったと思いますか?逆境の子どもたちを救う「無料塾」が目指すのは「幸せのおすそ分け」_img0
 

お金で孤独なぜいたくを買うより、とても幸せな時間がある

また、塾生の中でも、苦しい家庭に育ちながら一生懸命勉強している、そんな後ろ姿を見ると、心の中で思わず「頑張れよ!」とエールを送りたくなるし、やる気のある子どもたちに学習に打ち込める時間を作り出せたことを、本当に誇りに思えます。指導してくださるボランティア講師にも、心からお礼を言えます。

 

こんな幸せを得られるのだから、「どうしてボランティアをしないのだろう? お金で孤独なぜいたくを買うより、とても幸せな時間があるのに」と思います。

私は、無料塾の設立者だから、無料塾で幸せを感じますが、もちろん、他のボランティアでもいいと思うのです。料理が得意なら子ども食堂は楽しいと思うし、フードバンク活動で、苦境にある人を直接応援するのもやりがいがあるでしょう。さあ、今までの生き方をちょっとだけ変えて、逆境にある人のために生かしてみませんか?


●著者プロフィール
小宮位之(こみや たかゆき)さん

認定NPO法人八王子つばめ塾理事長。1977年東京都生まれ。貧困家庭に育つ。都立南多摩高校、國學院大學文学部史学科卒業。私立高校の非常勤講師や映像制作の仕事を経て、2012年に無料塾である「八王子つばめ塾」を設立。翌年、NPO法人化。塾創設以来11年間で、300名を超える卒業生を高校や大学に送り出す。無料塾を立ち上げたいという個人への助言活動も精力的に行い、全国で50か所以上の無料塾の立ち上げをサポート。現在は、NPO法人東京つばめ無料塾の理事長を兼任し、東京薬科大学と私立高校で非常勤講師を務める。

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『「無料塾」という生き方 ― 教えているのは、希望。』
著者:小宮位之 ソシム 1430 円(税込)

全国の無料塾の草分け的存在、「八王子つばめ塾」の設立者が、自身や講師、生徒たちのエピソードを紹介しつつ、無料塾の理念や授業内容について語ります。その優しい筆致に温かさを感じつつ、社会問題となっている貧困や教育格差の実情を知ることができる一冊です。


写真:Shutterstock
構成/さくま健太
 
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