空気を読む「はなし言葉」VS.心を落ち着かせてくれる「書き言葉」

言葉のプロフェッショナルに学ぶ「大人こそスマートに毒を吐きたい!」【詩人・最果タヒ×松本千登世】_img0
 

 

最果:相手のいるはなし言葉だと空気を読まないわけにいかないけれど、書き言葉は心を落ち着けて読めます。手紙と一緒ですね。私は嘘つかずに書きました、あとは受け止めてください、という。はなし言葉でそこまでいけることは私にはないので、だから、書くことが好きなのかもしれないです。今の自分が何を思っているのか、書き言葉によって自分のことを落ち着いて捉えられます。

「共感や、わかってもらう、ということを追いかけて、忘れ始めていた自分の「本当」が、奥にまだ眠っていることを思い起こすのではないか。もしかしたら。」『恋できみが死なない理由』より
 

 


松本:それって自分に聞いてるってこと?

最果:はい。はなし言葉だと場の力の方が強く作用しているので、その場でうまいことまとめちゃう。書く時間は、ダラダラ書いていても誰も何も突っ込んでこないし、誤魔化しが効かないので、逆に自分に正直になりすぎることもあります。

松本:嘘をついている自分を削ぎ落とすっていうことですね。先ほどもお伝えしたけれど、同じ日本語を持つはずなのに、タヒさんのように言葉が出てくることにすごくジェラシーを感じます。私は、書いていても辻褄を合わせることを考えてしまうから。音楽とも数学とも違うのだけど……、リズム感を整えちゃうんです。綺麗なものにしちゃう。ゴツゴツしたところを取り払ってツルッとしちゃうから。タヒさんの言葉はアートのように感じます。