いい側面だけを見る訓練を重ねてくると、自意識がふくらんでいく?

言葉のプロフェッショナルに学ぶ「大人こそスマートに毒を吐きたい!」【詩人・最果タヒ×松本千登世】_img0
顔は言葉でできている!』(講談社)より。女優・井川 遥さんから「気づかれることが目的じゃないでしょ?」と言われてハッとした時のこと(本文16ページ)。

最果:人によってバラバラだと思うので具体的にどう思っているのだろうと考えることはないです。ただ、一人の人が本を買うときに、そこに求めている“夢”のようなものはあるのだろうなぁと感じていて、それは大切にしたいと思っています。人生とか生活って、現実に起こっている事象だけじゃないと思うんです。何かそことは違う夢のようなものを人は信じて生きていると思っていて、その夢を自分の作品に見出す人もいるんだろうなって。夢のような何かを信じたり、願ったりすること、それを見つめているからこそ歩んでいける現実ってあって、だから、私はそういう読む人の「信じる」感覚を壊したくないなと思っています。

 


松本:タヒさんの言葉を読んで、私は“素”じゃないなぁと思いました。

最果:私もずっと素ではないですよ(笑)。

松本:いい側面だけを見る訓練を重ねてきたので、そっちばっかりの筋肉が鍛えられて素の自分はどこかなって思っちゃう。

最果:松本さんの在り方はそれで素敵だと思います。私は、自分が思っていることに整理がつかなくて、こういう職業に流れ着いた感じです。思いが全部言葉に向かっているというか、無人の空間で心をひらいているっていうか。

松本:無人の空間で心をひらくというの、素敵です。人のいる空間だと、いろんなものも入ってきちゃいますから。