『虎に翼』の好きなところを挙げはじめるとキリがなくて、さだまさしのコンサートのMCくらい長くなってしまいそうなのですが、数あるうちの一つとしてタイトルバックを推したいなと思います。

米津玄師の『さよーならまたいつか!』に乗せて、六法全書が翼を広げるように羽ばたいていく。そして、寅子(伊藤沙莉)の法衣には様々な女性たちの群像が。ひとり舞い踊る寅子は、つまずき、倒れながらも、決して瞳に意志の炎は絶やさない。やがて女性たちは手を取り合い輪になり、最後は共に踊り、希望を探すように彼方を見上げる。

寅子だけじゃない。あの時代にもいろんな女性たちがいて、それぞれが自分の場所で自分の人生を懸命に生きていた。そして、そのバトンが今私たちの手に受け継がれている。私たちは、一人じゃない。立場の異なる女性たちを結ぶ、強い連帯。

『虎に翼』とは、日本初の女性弁護士による一代記ではなく、およそ100年前のこの国を生きたあらゆる女性たちの群像劇であることが、短いタイトルバックから伝わってきます。第3・4週は、そんな寅子以外の女性たちの人生にスポットが当たりました。 

©NHK


異なる地獄を持つ者たちが手を取り合うことで世界は変わる
 

特に大きくクローズアップされたのが、寅子の同級生であるよね(土居志央梨)と梅子(平岩紙)。キーワードは戦うことです。
 

 


貧しい家庭に生まれ、唯一の心の拠り所だった姉も15歳で女郎として売り飛ばされたよねは、自らの人生を守るために家を飛び出し、女であることをやめ、姉の紹介でカフェでボーイとして働きはじめます。けれど、最愛の姉が置屋の主人から金を騙し取られていたことが発覚。なんとか奪い返そうとするも、無知なよねには何もできません。己の無力さに打ちひしがれていたよねの前に現れたのは、一人の男性弁護士。法律の専門家である男は、代わりに姉の金を取り返してくれると言う。しかし、その代償はよね自身の体だった。

女であることから逃れたいのに、女であることしか自分には武器がない。だから、よねは力を求めた。弱者を踏みにじるすべての者を屈服させ、あらゆる理不尽に対抗し得る力を。よねは、戦うために法を学びに来たのでした。