女性としての自信を取り戻していく、ヒロインの成長物語
一気に燃え上がっていく2人ですが、順風満帆な日は長くは続きません。世間から向けられる厳しい目は多感な10代の娘にも影響し、現実的な問題があふれ出てきます。真実の愛を見つけるもハードルが多すぎる男女の行方はそう単純なものではないのです。アイドルとの恋は、夢物語で終わってしまうのか、終わらないのか。果たしてどう着地していくのか、最後の最後まで見届けていく面白さがあります。
一方で、アン・ハサウェイが見事に演じ切るソレーヌの成長物語としても見ることができそうです。というのも、ソレーヌは一人娘を育てながら経済的にも精神的にも自立した女性ではあるものの、女性としての自信を無くしている様子が伝わってきます。
きっかけとなったのは、元夫の浮気。それが原因で離婚し、「もう恋なんて」状態で40歳の誕生日を迎えたタイミングでした。元夫の浮気は当時、周囲にも知られているほどあからさまだったのに、全く気づけなかった不甲斐なさから、自分を責め続けてもいるのです。なかなかにリアリティのある設定です。
そんなソレーヌが運命の相手であるヘイズ・キャンベルに真っすぐな想いで愛され、大胆に解放されていく姿はエロティシズムだけでなく、女性としての自信を取り戻していく表れでもあります。乾ききった状態から一変、ピアノの上でのキスに始まり、ロンドンのホテルで結ばれるまで、わりとじっくりシーンを割き、ソレーヌにとって重要な進化の過程であることを意味づけているように思います。言わば、色気のビフォーアフターを楽しめるところでもあって、それを演じるのがアン・ハサウェイという。これ以上にないほど堪能できます。
女性としても自信を持ち、自己肯定感を高めていくソレーヌをアン・ハサウェイが生き生きと演じているからこそ、手に届かない存在のアイドルとの非現実的にも思える恋愛ストーリーがリアルにも感じるのかもしれません。アン・ハサウェイおそるべし。
構成/山崎 恵
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