車を1時間飛ばして、45分のセックス
当時お子さんは小学生だったので、義両親には小学校で役員の集まりがあると言って、首から名札を下げて出かけたそう。相手は高校時代の知り合いで、住んでいるのも春香さんが新卒の頃働いていた地方都市。中間地点のラブホテルまで、お互い車を1時間ほど飛ばして集合するそうです。そして45分から60分だけ、体を重ねたといいます。
相手は自営業だから平日の昼間も会えるし、何よりまったく好みじゃない顔なので好きになる心配がなかったから、事情を話して頼み込みました、と春香さん。
「容貌だけでいえば、よほど夫の方が好みでした。セックスを頼んだ同級生はのんびりしていて、あまり深く物事を考えないひと。バツイチであることは同窓会で知っていたので、言葉は悪いんですが、目をつけました。
新卒で働いていた街で結婚式があったときに、思い切ってお茶に誘ったら運よく相手が暇だったんです。あちらは呼び出されてきょとんとしていましたけど……。久しぶりの外出が嬉しくて、結婚式と二次会で飲んでいたので、その勢いで身の上相談をしました。
向こうは驚いていましたけれど、悪い話じゃないと思ってくれたらしく、引き受けてくれました」
相手の男性も、春香さんに恋愛感情はなく、お金もかからない割り切った関係がありがたいというスタンスだったそうです。それがお互いのニーズを満たしていて、恋愛とは程遠い関係がゆえに快楽に没頭できたのだとか。
倫理にまったくもって反するものの、長年の経緯を考えるとお気持ちはわかるような気もします。しかし夫婦のこと、家のことは何も解決しないばかりか、余計に良くない状況になりそうです……。
「夫は私にもう関心がないので、何も気がつきません。義両親のようがよっぽど私をある意味で気にかけていて、『学校の手伝いなら仕方ないけど、その分家事に力を入れろ』『育ちが悪いのが周りにバレないように外にいる間は気を抜くな、派手な服は下品だからよせ』とか言ってきます。まあ確かに、育ちが悪いのかもしれない。家族を裏切って好きでもなんでもない人とセックスしてるんですから」
自嘲気味にため息をつく春香さん。筆者も言葉が継げず、しばしお互いに沈黙です。
夫婦の関係がこじれたとき、浮気は悪手です。離婚することになったときは当然慰謝料を払いますし、いい展開が待っていることはありません。
それを前提に、春香さんが身も心も乾いて孤立無援だったとき、ほかにどのように解決するべきだったのかを提示することはできませんでした。話し合えばいい、あるいは我慢するべきだというのは簡単ですが、当事者ではないから言えることだと感じました。
後編では、密会を重ねる春香さんがある事件によって変化する過程を伺います。
写真/Shutterstock
取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
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