ナンバー1キャバ嬢から介護士になった村上知美さんが、介護の体験や介護への考え方を綴った『ナンバー1キャバ嬢 ピカイチ介護士になる』という本があります。老いによって起きる様々なこととどう向き合い、最期の時をその人らしく、穏やかに楽しく過ごすためにどうしたらいいのか、そのヒントが詰まっていて、今介護に悩んでいる方には、ぜひ一度読んで欲しい一冊です。
介護士は本当に素晴らしい仕事だ、と心から実感する村上さんでも、自分の親の介護を出来る自信はない、と語ります。3回にわたるインタビューの最終回は、自分の親の介護や看取りとどう向き合ったらいいのかについて、お話を伺いました。
村上知美(むらかみ・ともみ)さん
1982年に山形県で生まれ東京近郊で育つ。18歳のとき夜の世界に足を踏み入れてキャバクラ嬢となり、お店のショーメンバーとしても活躍してナンバー1になる。22歳でキャバクラを引退して、介護福祉専門学校に入学。24歳から介護福祉士として施設で働く。カナダの老人福祉施設を見学したり、介護ヘルパー育成の講師を務めたり、全国ノーリフティング推進協会の学会に同僚とともにチームで出場して優勝をおさめるなどした。現在は不動産業に携わっている。
第1回「キャバ嬢が介護士に!セクハラ、ハプニングへの対処...キャバ嬢の経験が活きた、「つらいことは半分で受け止める」コツ」>>
第2回「元キャバ嬢のベテラン介護士が見た、老いにおける男女の違い——男は“性欲”、女は“推し”!?【村上知美さん】」>>
介護士として“その人だけの大切なもの”を尊重したい
——介護士は、最期の時間を迎える方たちの“看取り”に向かう期間に寄り添う仕事でもありますよね。とはいえ、人手が足りない、キャパもいっぱい、だから最低限の対応で済ませればいい、っていう考え方もできると思うんです。でも村上さんの本を読むと、“胃ろう”の選択肢についてもご家族の意見を最大限尊重したり、お年寄りの近くにあるとトラブルに発展する可能性のあるティッシュなどを隠すかどうか、議論・検討されたりしていて、利用者さん一人ひとりの尊厳を最大限守り、寄り添うことを大事にされています。すごく手間が増えることでもあると思うんですけど、それでも尊厳を優先する理由を教えてください。
村上知美さん(以下、村上):なんだろう……その理由を考えたことって、なかったですね。私たち人間の周りって、ムダなもので溢れてるじゃないですか。 例えば、私が大事にしているものも、他人から見たらゴミに見えるかもしれないですよね。入居者さんの中でも、汚れたタオルを大事にしている方がいたりするのですが、他人から見たらただの“汚れたタオル”でも、その方にとっては“すごく大事な思い出があるタオル”だということは、表情とかを見ていればわかるんです。
枕元にティッシュの山あって、「これ片付けておくね」と伝えると、「そこに置いておいてちょうだい」と言われたこともありました。何でだろう? と思って夜に見に行くと、そのティッシュで汗や唾液を拭いていたんです。だから枕元に置いていた方が、寝たまま使えて便利なんですよね。
そういうことが、利用者さん一人ひとりにあるんです。汚れたタオルも、枕元のティッシュの山も、生活する上で“絶対になくてはならないもの”じゃないけれど、そうではない、“その人だけの大切なもの”も、大事にしたいなと私は思っているんです。
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